東大LEGO部@第36回日本義肢装具学会学術大会

2020-11-14 18:44:06 | イベント
皆さんこんにちは。
部員のこのやろーです.
先日東大で開催された第36回日本義肢装具学会学術大会にて、企画展示として東大LEGO部が参加しました。
そこで展示した作品について、制作者のコメントと併せて紹介します。

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「下肢装具」
制作者:このやろー



 下肢装具とは足に装着して立位・歩行機能をサポートする装具だそうです。今回作ったのは、その中でも短下肢装具と呼ばれるものです。

 短下肢装具をレゴで作るにあたって、実際に機能性を持たせるのは難しいと思ったので、別のアプローチをすることにしました。その中で、様々なパーツを組み合わせて色々な作品を作れることがレゴの魅力の一つだと考え、そのようなコンセプトで作品を作りました。具体的には、写真中央のように白ベースで全面にポッチが出ている下肢装具のモデルを制作し、そのポッチ部分にパーツをつけることで様々なデコレーションができるような作品にしました。写真左は実際の下肢装具風のデコレーション、右はレゴらしいカラフルなデコレーション例です。

 制作の中で意識したこととしましては、できるだけシンプルにかつそれとわかる形状にするということです。実際の下肢装具は底面を足の形に合わせているため、もっと複雑な形状をしていますが、そこまで再現すると全面にポッチを出すというコンセプトと両立できません。かと言って、下肢装具とわからなければ作品としての意味がありません。レゴで何かを作っているとこのようなトレードオフの関係に直面することがよくありますが、今回は2つの要素をうまくケアしつつまとめられたと思います。

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「電動義手」
制作者:Hachi



自分は全くの素人ですが、制作にあたり調べたところ、義手は大きくは
・外観の再現のための「装飾用義手」
・ハーネスやケーブルを組み合わせ、使用者の筋力を動力源とする「能動義手」
・モータ・バッテリーを動力源とする「筋電義手」
に区別されるそうです.

今回はこのやろー君が下肢装具の静的モデルを制作してくれることになっていたので、自分は「動き」に拘ってみようと思いました.
そこで、今回の制作での目標は「LEGOらしさと実用性を兼ね備える(筋電)義手を作ること」としました.

[LEGOらしさ]
筋電義手にはモータとセンサが必要になります.LEGOのモーターといえばPowerFunctionsやMindstormsのEV3なども使えますが、今回は最近出てきたPoweredUpを使用しました.


PoweredUpの特徴はスマホとの連携が前提となることです.アプリの自作から行うことで、スマホの高度な処理能力やディスプレイを活かした制御を行うことができます.PoweredUpについては個人ブログで解説記事(リンク:http://blog.livedoor.jp/lego_nabe/archives/7735096.html)を書いていますので、詳しくはそちらをご覧ください.

モータはPoweredUpのパーツで存在しますが、通常の筋電義手で制御に使われる筋電センサのパーツはありません.電子回路を自作すれば筋電センサをLEGOのガワと組み合わせることもできますが、「LEGOらしさ」にこだわりたかったのと、LEGO以外に手を出すと大変なことになるリスクがありました.そこで、今回は代わりにPoweredUpパーツのセンサや連携しているスマホのマイク(音声認識)によりモータ(出力)の動作を制御することにしました.


例えば、肘のヒンジをギアボックスを介してモータに繋ぐことで、モータの角度センサによる肘の曲げ角度の取得を可能としました.

義手としての構造以外では、今回のようなギミックに重きを置く作品における「LEGOらしさ」は「ギミックのカスタマイズ性」だと考えました.そこで、義手をモータやバッテリーがある本体とアクチュエータとしての機能を持つ手先部分のアタッチメントに分け、アタッチメントを交換することにより様々な動作が可能となるようにしました.また、アタッチメントの接続部分も当然LEGOなので、オリジナルのアタッチメントを作成することで動きや見た目をカスタマイズすることができます.


物を掴むための義手以外にも、剣や銃のようなものも作ってみました.


ちなみに、下肢装具のようにパーツ交換によりカラーリングを変更できるようにしたかったのですが、RedとDark Azureでしかパーツが揃わないようです(厳密には画像のDark Azureも一部色が揃わないので、変えています).


今回はパーツの入手性から本体は赤を中心としたカラーリングで制作しましたが、できればもう少し汎用性の高いパーツでも強度を出せるようにしたいものです.

[実用性]
今回は「実用性」にこだわるにあたり、ソフト・ハードの両面で工夫しました.

まずソフト面では、なるべく片手で操作できるようにしたいと考え、義手を装着していない方の手での操作(スマホ画面やSmartHubボタンの操作)を最低限にするために、アプリではiOSの音声認識機能を導入しました.例えば、タッチパネルのボタンの操作をする代わりに、スマホのマイクに「開く」「閉じる」など発声することで義手の開閉を行います.


また、モータの角度センサやSmartHubの加速度センサにより、義手の姿勢(向きや肘の曲げ具合)を監視し、特定のジェスチャーを行った際にギミックを発動する、という機能を開発しました.例えば、ライトセイバー的なアタッチメントでは、腕を勢いよく振った時に音が鳴り、LEDが発光するようにしました.


ハード面では、強度を重視しました.今回はSmartHubを電池交換が可能な位置にを内蔵する都合で、大きいフレームを全体に通すことができなかったので、リフトアームだけでなくTechnicブロックも使用し、しなりを可能な限り少なくしました.細かい点としては、装着したときに痛くないように、内側にパーツの角(踏むと痛い部分)が露出しないようにしました.そのために、角が少ないTechnicリフトアームを中心とした構造になっています.


大きさに関しては設計の都合もあり、自分の腕を参考にしましたが、Linear Actuatorを使用したカバーの開閉やDotsブレスレットの調整である程度の太さに対応できるようにしました.


義手のアタッチメントの交換もなるべく簡易にできるようにしました.
接続については強度が必要なものはペグを複数使用した接続にしていますが、そこそこの強度で良いものはプラのしなりを利用したロック機構を設計しています.


また、先端部にBoostのVisionセンサを搭載しています.


これは赤外線リモコンとして使用できる他、距離測定センサとして使用することでアタッチメントの着脱を自動検知します.元々はアタッチメントの色を読み取って判別できるようにする予定でしたが、精度が低く、使いづらかったので着脱検出のみ(その後発声or手動で選択)となりました.

なお、今回の設計ではSmartHubを本体先端部に配置していますが、当初は肘のあたりに配置しようとしていて、断念した物です.本来は肩や肘の負担を減らすためになるべく手前側に配置したかったのですが、モータのケーブルの長さの都合で不可能だったので、うまい取り回しを思いついたら再チャレンジしたいところです.(LEGOのパーツの都合ではなく、通信の原理的にケーブルはある程度の長さにしかできないようです)

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実は一年以上前からの企画で、コロナウイルスの影響などもありましたが、幸い無事作品の完成・発表ができました.
学会での展示というものは初めてでしたが、普段の学祭とはまた違った感想等をいただくことができ、とても良い経験になりました。

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