新宿スペース107へ、ハンドメイドビジョン・プロデュースの舞台『悲しき天使』を観に行く。夏目ナナ、納見佳容(=画像)主演。演出の森岡利行が率いる劇団ストレイドッグで何度もかけられている演目らしい。ストレイドッグの公演は、やはり納見さん主演の『蒲田行進曲』を昨年観ている。
遊郭の女性とそれを巡る男たち、“女師”と呼ばれ娼婦とともに暮らし心身のケアを生業とする男、客、家族。
容易に想像できるように、ストーリーはありがちというか、ともすれば陳腐だが、そのぶんストレートですんなり心に届く(私の横の席で子どもが観ていたがだいじょうぶか?笑)。ほんの少し、筋に不整合があったり、自閉症者についてなど事実に不明な点があるような気がした。
演出は歌と踊りがふんだんでダイナミック。使われた音楽もメリー・ホプキンの「Those Were The Days(=悲しき天使、そのまんま)」やビリー・ジョエルの「素顔のままで」とポピュラー。
AVを最近はぜんぜん見ていないので、動いている夏目さんは初めて。演技はまあまあ、でしょうか。踊りは良かったがソロで歌があるのはいかがなものだったかと。
大メインが夏目さんで、サブ主役みたいな扱いだった納見さんだが、演技が昨年から比べてもあんまり進歩していないようで、周りを固める先輩の役者さん(ストレイドッグの人など)に食われちゃったかな。乞う更なる努力。
筋の上で重要な役どころだったと思われる、夏目さん演じる一美の相手の“女師”より、ワキの“女師”役の重松隆志さんのほうが良かった。昨年も同様に感じたがこの人は達者。
プロレスを引退して芸能に進んだ納見さん、AVをスタート地点にそれ以外のテレビ・Vシネなどへ進出している夏目さん。とくれば、Vシネからスタートしてプロレスを短期体験、その後ケガをして、本格的にプロレスラーになろうとしたが引退、タイミングがいいのか悪いのか私がこの舞台を観る前日にAV出演が明らかになった、東城えみのことを連想しないわけにいかない。
東城さんの場合、前職であるレスラー生活からあたかも連続しているような作品でデビューしたことに問題があるが、次の仕事にAVを選んだこと自体には、私的に否応は無い。それも一つの職業であり、本人の決断だろう。それは、巷間よく噂になる、引退女子レスラーが風俗で務めることについても同様(余談だが、ひとつの貴賎のない職業としての娼婦という視点が先の舞台にあれば、深みはあったかもしれないが、大衆向けのものとしては疑問符かな)。
しかし、3人ともに途は厳しいだろうが、なかでもいちばん困難なのはいうまでもなく東城さんでしょう。私個人としては、レスラーもテレビタレントもAV女優も風俗嬢も、自らが選択した職業であれば上下は無いと思っている(つもりだ、思いたい)が、社会的には厳然とした差があるし、現に事実が発覚して1日にして、一部で物凄い風当たりである。そうまでしても、他人から観られる仕事、女優だったりプロレスラーだったり、をやりたかったのかもしれない(麻薬のような魅力があるんでしょうか)が、底から這い上がるのは難しいと思うよ。夏目さんほどの器量をしても、そう感じさせられるのだから…。
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