現在、台湾と香港で使われている漢字、すなわち「繁体字」について、興味深いニュースが流された。
全国政協委員、繁体字の使用再開を提案
2009年3月9日14時56分
全国政協委員の潘慶林氏は今年の両会で、現在中国で使われている簡体字を今後10年間で段階的に廃止し、繁体字の使用を再開することを提案した。「繁体字の利用は中日文化交流にも役に立つ」と潘委員は指摘する。
天津から来た潘委員は、1985年から1989年まで日本に留学した経験を持つ。日本を訪れた昨年9月28日には、日本僑報社が創設した日曜中国語会にも参加し、日本人参加者との交流も行った。潘委員はこの中で、中国と日本はいずれも漢字を使う隣国同士であり、両国関係はとても重要だとの認識を示した。潘委員はさらに、日本僑報社の開催する中国語会を評価し、中国文化の学習に対する日本の人々の熱意や日本人が繁体字を使用していることに感動をおぼえたと語った。潘委員はその後、さまざまな調査と研究を経て、繁体字使用の再開に向けた議案を政協会議に提出した。
潘委員は議案の中で、繁体字の使用を再開すべき理由として次の3点を挙げている。(1)50年代に行われた漢字の簡略化はあまりに大ざっぱで、漢字の芸術性や科学性に反するものだった。例えば、「愛」という字は簡略化の際に「心」が省かれたが、これでは「心のない愛」ということになってしまう。(2)繁体字は以前、「あまりにも複雑で学習にも筆記にも向いておらず、漢字の普及に差し障る」と考えられていた。だが、多くの人がパソコンで漢字を変換する現在、複雑であることのデメリットはほとんどなくなり、簡体字の存在意義も徐々に失われつつある。(3)繁体字の使用再開は大陸部と台湾との統一に役立つものとなる。台湾では依然として繁体字が使われており、これを「正体字」と呼んでいる。「正体字」を世界無形遺産に申請しようとの動きもある
日本では、倉石武四郎をはじめとする中国文学者が、「新中国」の「簡体字」を支持して、岩波書店から発音表記の「中国語辞典」を出版したりした。大陸中国では、漢字(繁体字)が支配階級・知識人の「支配の道具」であるという主張から、漢字の簡略化に踏み切ったのだが、例のごとく日本でも追従者がいたのだった。
「簡体字」の本家である中国から、上記のようなニュースが飛び込んでくるとは、本当に驚かされた。パソコンの普及が理由に挙げられているが、確かに中国は豊かになったという証左だろうか。
しかしながら、そこはしたたかな中国のことだから、「繁体字」使用の提案が、台湾への懐柔政策である可能性も棄てきれない。