最高裁で注目すべき判決が出た。
部下のミス、課長に賠償責任なし 最高裁で原告逆転敗訴
11月27日(木) 18時14分

静岡県教育委員会の職員のミスで、教職員退職金の源泉所得税が納付されず、延滞税などで損害を県に与えたとして、市民らが起こした訴訟の上告審で、最高裁は27日、当時の財務課長に全額支払いを命じた2審東京高裁判決を破棄、原告逆転敗訴の判決を言い渡した。2審判決は「原因は財務課副主任のミスで、課長の過失と同一視できる」と判断したが、甲斐裁判長は重大な過失を認めなかった。
今回の最高裁判決は、組織上の管理監督者が、部下の不祥事にはずべて責任を負うべきだという2審判決を覆す画期的なものだ。
周知の通り教育委員会という組織は、行政委員会のひとつとして知事部局とは独立している。麻生首相流に言えば、「教員も教育委員会も、世間とはかけはなれた常識を持つ」世界だ。文部科学省が上意下達官庁であると言われるのと同様に、教育委員会は、「通知・通達」や「指針」を学校現場に下達するだけの役所で、決して自ら責任を問おうとはしない。その意味では、今回の裁判自体が、「非常識な人たち同士の争い」という側面は否めない。
私の知る限りでも、教育委員会が身体障害者と精神疾患者の事務職員を学校に配置しながら、その職員のミスをすべて学校長と事務長に押しつけたという事例がある。まともでない職員を押しつけられた現場では、どう対処すればいいのだろうか。
今回の静岡県の事例は、教職員の退職金計算という、極めて実務的なミスを、果たして管理監督者である課長ががチェックできるのかという基本的な問題を指摘している。
問題職員が起こしたミスをすべてチェックするには、膨大な労力と時間を要するのだが、果たして現場にそのような余力があるのだろうか。
今回の判決は、管理監督者の責任を有限とした点において、極めて現実的で妥当な判決と思われる。