中川洋子は、山崎瑞奈と向かい合って座っていた。
ともに記者であり、中川洋子は病院と街の薬局を回っていた。
山崎瑞奈は厚生省と国会の記者クラブに所属していたが、編集課長の大野一郎の補佐役にすぎなかった。
編集部長の福島吾郎は大阪本社にいて、専務取締役兼主筆の東賢一は、月に1回は東京支社にやってきた。
京都生まれ京都育ちの瑞奈は、大阪本社で採用されたが、彼女の希望で東京支社勤務となる。
東専務は採用時に瑞奈に面接したことで、彼女がお気に入りの社員の一人であり、「瑞奈ちゃん、美味しいもの食べに行こか」と東京支社に來ると必ず彼女を食事に誘っていた。
中川洋子は、近くにあるデパートでのアイドル歌手の新曲発表会に行ったことを社内で自慢話とした。
午後1時からの催しであり、昼休みの時間が決まっているタイピストの岡村美登里は「あなたち、編集者は時間が自由でいいわね」と反目する。
「まあ、ええやないか」東専務はその場をとりなすのだ。
美登里は、瑞奈を嫌っていたが、それ以上に洋子に辛く当たっていた。
洋子は、彼女の姉が経営する神田駅ガード下のスナックでも働いていた。
そして、美登里は夜の厚化粧の洋子に反感を抱いたのだ、支社長が美登里をお気に入りで、彼女を誘ってその店に行ったのだ。
「あんな人と一緒に働きないわ」と大野課長に言うのである。
性格が温厚な大野課長は困惑する。
結局、洋子の姉が交通事故に遭ったことから、洋子は退社を余儀なくされる。
そのスナックは、昼の時間帯だけ食事が食べられたのだ。
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