6/19(土) 5:59配信
デイリー新潮
感覚で煽ってはいけない
「科学」ならぬ「感覚」で国民を煽る分科会の尾身茂会長。東京五輪にも同じ姿勢でケチをつけたが、五輪で感染はさほど広がらないという不都合な真実が突きつけられた。一方で、厚労省の支援で治療薬の開発にも拍車がかかり、コロナが風邪になる日も近いか。
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「いまの状況でやるというのは、普通はない」。東京五輪について、6月2日の衆院厚生労働委員会でそう言い放ったのは、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(72)だが、「普通」とはなにを意味するのだろうか。
科学者なら、「普通」であるかどうかを問題にする前に、「普通」を定義すべきだが、それをしない以上、主観的な言説だと判断されても仕方あるまい。
現在、五輪への反対意見の多くが感情論に支配されている、という指摘がある。感染対策の元締めたる尾身会長自身が、根拠が定かでない主観論を口にするのだから、五輪をめぐる議論が、客観的なデータをもとに便益と危険性を比較考量する建設的な方向に向かわないのも、無理はない。
その尾身氏は、五輪への提言について「なるべく早い時期にしっかりしたものを作る」と、11日の衆院厚生労働委員会で発言したが、では、いままでなにをしていたのだろうか。
「尾身さんは五輪について提言するなら、1年前に言うべきでした」
と話すのは、元JOC参事でスポーツコンサルタントの春日良一氏である。
「昨年、それまでにウイルス対策をしっかり行うという前提で、五輪を1年延期したのです。そのために政府がなにを行うべきか、尾身さんたちが提言すべきでした。ところが、現実には医療体制が整備されず、ワクチンの確保や治療薬の開発が遅れたまま、五輪が迫っている。それを棚に上げ、いまになって発言することに矛盾を感じます。尾身さんは6月20日までに提言を出すそうですが、IOC側は2月にプレイブック(感染対策マニュアル)の初版、4月に第2版を出し、感染対策を細かく提言していました。そこではなにが足りず、どこを変えていくべきだ、と提言するなら建設的な議論になりましたが、時間があったのに、それはまったくしていません」
では、なぜいまごろ、こんな発言をするのか。
「昨年9月から五輪のためのコロナ対策調整会議が始まっている。尾身さんたちが見解を示す機会もあったはずです。その責任をとりたくないのでしょう。世間の目が五輪に厳しく、なにも発言しないままでは立場がなくなると恐れ、問題が起きたときに、“事前にこう言ったじゃないか”と言い訳できるように準備したとしか思えません」