冨田敬士の翻訳ノート

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"International Legal English"-法律英語をマスターするためのツール

2009-11-27 19:57:50 | 書籍
 専門分野の英語の習得も、音声学習を交えて進めるのが効率的である。しかし、外国にいながら法律分野の英語を総合的に聴く機会は少ない。この点、Cambridge University PressのInternational Legal Englishは、本格的な音声学習を可能とする点にまず注目したい。このテキストは中級から上級レベルの、主に法律系の学生や法律家を対象に編集されている。表紙や序文にも記されているように、教室での授業と独習用のどちらにも使えるように編纂されている点も特徴的である。
 この本はビジネス法分野のテキストで、全体が15の項目(本書ではユニットと呼んでいる)に分割され、それぞれの項目ごとにreading、listening、writing、speakingが盛り込まれている。特に音声面では各ユニットに2つの会話またはスピーチが編入され、それらが2枚のCDに収められ、全文が巻末に掲載されるなど、ボリュームたっぷりな内容である。会話やスピーチは法律家が普段使う、癖のない標準的な英語または米語で、質疑応答、交渉、セミナーなど、ビジネス分野のさまざまな局面を取り上げている。実際に聴いてみると米語と英語の間に大した違いのないことがわかる。

 因みに15のユニットは次のような内容になっている。
1. The practice of law
2. Company formation: company formation and management
3. Company law: capitalization
4. Company law: fundamental changes in a company
5. Contracts: contract formation
6. Contract: remedies
7. Contract: assignment and third-party rights
8. Employment law
9. Sale of goods
10. Real property law
11. Intellectual property
12. Negotiable instruments
13. Secured transactions
14. Debtor creditor
15. Competition law

 法律英語といえば、日本では主として米国法中心であるが、この本は英国系出版社の手になるせいか、英国法ベースで編纂されている。けれども、音声には米国の事例も盛り込み、解説では米国法との違いなどにも触れるなど、違和感がなく、わかりやすい。法律分野の「国際英語」を造り出そうという雰囲気が感じられる。少し残念なことに、この本では訴訟分野の英語が取り上げられていない。もっぱら国内法が取り仕切る訴訟分野を「国際英語」として取り上げるのは何かと無理があるのかもしれないが、訴訟抜きの法律英語では自信が持てない。訴訟の多発国として知られる米国の制度を中心に、ある程度訴訟の話を取り上げてもよかったのではないだろうか。
 テキストはA4版よりやや小さめで、全体が300頁程。文字が細かいのでかなりの情報量である。クオリティの高さを加味すれば、日本で購入して6000から7000円という価格は決して高くないだろう。どのユニットも難易度に差はなく、必要に応じてどこからでも始められる。
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