冨田敬士の翻訳ノート

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上海万博探訪 - 中国経済はなぜ強い?

2010-09-24 22:30:15 | 日記
 9月21日、残暑の厳しい上海に遊び、万博を見学した。会場へはアジアゾーンの入り口から中に入った。会場内の構築物やパビリオンは途方もなく巨大ではあったが、日本のマスコミの報道もあってほぼ予想通り。平日とはいえ来訪者の数は多く、人気のある中国館や日本館、ヨーロッパのほとんどの館は入り口に長蛇の列。1~2時間は並ばないと中に入れない。
 筆者が特に強い印象を受けたのは施設の大きさや人の多さではなく、会場全体のグローバルな様相だった。先進国はもちろん、アフリカや東欧の開発途上と思われるような国と国際機関、総勢246の参加団体が独自にあるいは共同でパビリオンを造営し、個性を競っていた。巨額の費用を負担してまでこれほど多くの国が東洋の一都市に集まったのは何故なのか。会場を散策しながら次第に疑問が膨らんできた。
 2009年の貿易統計をネットで調べると、中国の輸出と輸入に占める外資企業の割合はそれぞれ55.9%と54.2%となっている。つまり、中国経済の半分は外資の現地法人や合弁事業などによって支えられていることになる。上海や北京市内、空港などで見た多くの外国人も中国内で生産や流通にかかわっている人たちだという事実が見えてくる。外資の受入れには難題も少なくないだろうが、巨額の税収をはじめ経済面での利益は大きいと推測される。
 日本でも1970年に大阪万博が開催され、海外からも多数の関係者が訪れ、本格的な高度経済成長に移行する転機になった。そのころの日本は外資にとってぜひとも参入したい市場の一つだったと思われるが、日本は結果的に外資を締め出す形でのいわば純血指向の経済政策をとった。外資に対する審査に時間をかけすぎるなど当時いろいろな噂を聞いたが、結局外資の会社や工場はほとんど立ち上がらずに終わった。一方、長時間労働と勤勉に支えられた純国産の工業製品は洪水のように輸出され、巨額の外貨と生活の豊かさをもたらしたものの、欧米各国の強い反感も買った。松下電器産業の故松下幸之助は「いいものを作って、それで批判されたのではかないませんな」と悔しがった。純血主義がまだ輝いていた時代である。
 中国は多民族国家という環境にもあるせいか外資に対する警戒心は薄いように見える。むしろ外資の誘致には積極的で、資金があるとか特異な技術を持っているといった企業は歓迎されるようだ。最近も日本の新聞によると、ある日本企業が上海で工場を設置したいと申請したところ、技術を開示する用意があるかどうかや、現地採用の従業員が独立して競争相手になる可能性もあるがそれでもよいかなどを聞かれたので、応諾したらその場で許可をくれたという。こうした積極的な受入れ方針が中国経済の躍進に貢献していることは確かだろう。
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