冨田敬士の翻訳ノート

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電子辞書の選び方

2009-07-26 14:10:51 | エッセイ
 最近の電子辞書は大型辞書を何冊も内蔵したものが多く、単語の意味を比較したり用例を検索したりするのに便利になった。それに、筆者のように細かい文字が見づらい年齢になると、文字サイズの変更が自由な電子辞書は生活の必需品でもある。ところがあまりにも種類が多くなって、店頭に並んださまざまな機種を見ていると、どれが一番自分に適しているか判断に迷う。どんな要素を判断の基準にすればよいだろうか。
 液晶画面の見やすさは、以前はメーカーによってバラツキがあったが、最近はどれも同じように見やすい。値段の張る機種になるとバックライトといって、画面の裏側から光を当てることで画面を見やすくしたものもあるが、バックライト機能のないものでも画面の見やすさにはそれなりの工夫がしてあるので問題はないようだ。
 店頭でいろいろな機種を操作してみると、データの処理速度がメーカーや機種によって多少違うことがある。なかにはかなりの高級機でも表示速度が遅れがちのものもあるので、その辺のチェックは必要かもしれない。仕事などで日常的に使うのであればレスポンスはなるべく早いほうがよい。
 入力キーの操作性は意外な盲点である。電子辞書はキーボード部分が小さいので、なるべく片手で楽に入力できるほうがいい。最近の電子辞書はキーボードの一部に四角形のパネルを設け、そこから指や特殊なペンで手書き入力などの機能操作をするようになったものが増えている。便利ではあるが、その分だけ入力キーの配置スペースが狭くなり、入力の誤操作をしやすい。中級以上の利用者には、中国語以外こうした手書き入力は必要ないと思う。入力だけなら操作パネルのないSeikoなどが使いやすいかもしれない。
 一番判断に迷うのは内蔵された辞書ソフトの種類である。内蔵辞書は多いほど多目的に使えてよさそうな気がするが、実際にはそうとばかりは言えない。辞書ソフトが多いと値段が張るばかりでなく、操作上面倒なこともある。普段よく使う辞書は、入力画面をなるべく一回のキー押しで表示させたい。内蔵辞書が多くて何回もキーを押さないと目指す辞書にたどり着けないようでは使いづらい。といっても、英語の電子辞書を専門的に使うには最低限、大型の国語系辞典(広辞苑など)と英和辞典(リーダーズ英和やジーニアス大英和など)、定評のある和英辞典(研究社の和英中辞典など)、英英辞典(オックスフォード現代英英など)、それに英和活用大辞典ぐらいは必要だろう。
 最近の電子辞書には別売カードを差し込んで使えるようにしたものもある。別売カードはメーカーによって品揃えが違うので、必要な辞書をあとからカードで取り込もうという人はその辺のチェックも必要である。ただ、筆者が経験したかぎりでは、別売カードで取り込んだ辞書は内蔵辞書に比べて処理速度がわずかに遅れ気味なので、普段ひんぱんに使う辞書は、最初から本体に内蔵されているものを選びたい。
 画面上で辞書を開くときの操作や画面表示はメーカーによって多少違いがあるが、英語の辞書では用例を参照することが多いので、この操作はなるべくシンプルなほうがよい。筆者が長年愛用したCanonの辞書は、決定キーを押して内容を表示したあと、もう一度決定キーを押すと用例が表示される。しかも熟語なども同じ表示画面にまとめて表示してくれるので、紙の辞書に近い感覚で使えて重宝した。ところが、電源スイッチを入れるたびにメーカーのマークが3秒間も表示される。この非能率を克服するため、結局電源スイッチを入れっぱなしでの状態で使っていた。
 携帯性の点では重さも選択の要素になるだろう。内蔵ソフトの多い機種ほど一般に重たくなる傾向がある。電池とキャリングケースを入れるとかなりの重量になるので、携帯に適しているとは言えない。通勤や通学で日常的に持ち運ぶ必要があれば多少内蔵ソフトを犠牲にしてでも軽いものがいい。本当は携帯用とそうでないものと2種類あれば理想的かもしれない。
 あれやこれや考えると、結局のところ電子辞書はいろいろな機種を実際に触って比較し、自分の必要をなるべく多く満たしてくれるものを選ぶという、ありふれた結論に落ち着く。
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