留学生と競争しなければならない日本の学生。
氷河期が再来した就職戦線で、外国人留学生に企業の注目が集まっている。日本での就職率はまだ三割程度だが、海外に展開する大手を中心に採用は上向いている。就職活動(就活)で「百社回る」と張り切る学生がいる一方、早い時期から始まる日本独特の習慣に戸惑う声もある。 (橋本誠)
「日本の就職活動の時期は特殊です。この文化に遅れると、帰国することになります」
十月上旬、東京都内で開かれた「外国人留学生就活準備セミナー」。人材派遣会社「グローバルパワー」(東京)の採用担当で韓国出身の金〓廷さん(26)が、流ちょうな日本語で語りかけた。「日本人学生は百社にエントリー(申し込み)している人もいる。二倍、三倍の努力を」
参加者は昨年の倍の六百五十人。大半が中国を中心とするアジア出身の留学生だ。就活サイト「マイナビ」の望月一志編集長は「日本の学生はゆとり世代で頼りないと見られ、皆さんのバイタリティーが期待されている」と励ました。
リクルートスーツを着て参加した中国出身の東洋大三年王暁亜さん(26)は「最低でも百社は受けないと」と笑顔。七月から合同企業説明会などを回っており「希望は商社。就職できたら、親にお金を送り安定した生活をさせたい」と話した。
日本製の農機具やテレビの品質に感動して「技術が高い日本で学びたい」と来日したという東京工業大大学院一年グエン・トウアン・ズオンさん(26)=ベトナム出身=は、「ベトナム企業は規模が小さく、研究開発への投資が大きくないので、日本で就職したい。就活を今から始めると、研究の時間がなくなるけれど、しないといけませんね」と話した。
違和感を口にする留学生も。ジーンズで参加したスペイン出身の東京外国語大大学院一年ペレイラ・アレハンドロさん(28)は「来てみたらスーツの人が多かったので、買おうと思います」。スペインでは就活の時期はまちまち。ファッション業界と地味な会社では学生の服装も違うといい「会社が違うのに、同じ方法でリクルートするのはおかしい」と不思議そうだった。
◆企業側期待、採用上向き
日本で就職した留学生は昨年、不況の影響で減少したが、「長期的な増加傾向は変わらず、既に底は打った」(就職情報会社)という見方が強い。IT企業の楽天が、外国人学生を既に採用している企業の人事担当者に、二〇一二年卒の採用予定を尋ねた九月の調査でも「やや増える」(14・5%)が「やや減る」(3・5%)を上回り、人気を裏付ける。
英語を社内公用語にする楽天は、一一年卒業予定の内定者約四百八十人中約八十人が外国籍。前年の十七人から五倍に増えた。海外への展開を見据え「国籍を問わず優秀な人材を確保していく」(広報課)戦略だ。
就活セミナーの参加企業も「パワー、突破力がある」(大手飲料メーカー)「日本語で不利になるのは望ましくない。エントリーシートは英語でもいい」(NTT研究所)と留学生を歓迎する。
質問回答サイト「オウケイウェイヴ」(東京)は今月、外国人留学生だけの就業体験(インターンシップ)を開始した。外国人の視点を新事業に生かすためで、評価が高ければ「卒業に合わせ、正社員で採用したい」(広報室)としている。
来日する留学生は年々増加しており、就職市場の留学生人気に「日本人の就職は本当に危ない」(楽天の担当者)という声も出ている。※〓は王へんに民
(東京新聞)(東京新聞:留学生 戸惑い奮闘中 :社会(TOKYO Web))
氷河期が再来した就職戦線で、外国人留学生に企業の注目が集まっている。日本での就職率はまだ三割程度だが、海外に展開する大手を中心に採用は上向いている。就職活動(就活)で「百社回る」と張り切る学生がいる一方、早い時期から始まる日本独特の習慣に戸惑う声もある。 (橋本誠)
「日本の就職活動の時期は特殊です。この文化に遅れると、帰国することになります」
十月上旬、東京都内で開かれた「外国人留学生就活準備セミナー」。人材派遣会社「グローバルパワー」(東京)の採用担当で韓国出身の金〓廷さん(26)が、流ちょうな日本語で語りかけた。「日本人学生は百社にエントリー(申し込み)している人もいる。二倍、三倍の努力を」
参加者は昨年の倍の六百五十人。大半が中国を中心とするアジア出身の留学生だ。就活サイト「マイナビ」の望月一志編集長は「日本の学生はゆとり世代で頼りないと見られ、皆さんのバイタリティーが期待されている」と励ました。
リクルートスーツを着て参加した中国出身の東洋大三年王暁亜さん(26)は「最低でも百社は受けないと」と笑顔。七月から合同企業説明会などを回っており「希望は商社。就職できたら、親にお金を送り安定した生活をさせたい」と話した。
日本製の農機具やテレビの品質に感動して「技術が高い日本で学びたい」と来日したという東京工業大大学院一年グエン・トウアン・ズオンさん(26)=ベトナム出身=は、「ベトナム企業は規模が小さく、研究開発への投資が大きくないので、日本で就職したい。就活を今から始めると、研究の時間がなくなるけれど、しないといけませんね」と話した。
違和感を口にする留学生も。ジーンズで参加したスペイン出身の東京外国語大大学院一年ペレイラ・アレハンドロさん(28)は「来てみたらスーツの人が多かったので、買おうと思います」。スペインでは就活の時期はまちまち。ファッション業界と地味な会社では学生の服装も違うといい「会社が違うのに、同じ方法でリクルートするのはおかしい」と不思議そうだった。
◆企業側期待、採用上向き
日本で就職した留学生は昨年、不況の影響で減少したが、「長期的な増加傾向は変わらず、既に底は打った」(就職情報会社)という見方が強い。IT企業の楽天が、外国人学生を既に採用している企業の人事担当者に、二〇一二年卒の採用予定を尋ねた九月の調査でも「やや増える」(14・5%)が「やや減る」(3・5%)を上回り、人気を裏付ける。
英語を社内公用語にする楽天は、一一年卒業予定の内定者約四百八十人中約八十人が外国籍。前年の十七人から五倍に増えた。海外への展開を見据え「国籍を問わず優秀な人材を確保していく」(広報課)戦略だ。
就活セミナーの参加企業も「パワー、突破力がある」(大手飲料メーカー)「日本語で不利になるのは望ましくない。エントリーシートは英語でもいい」(NTT研究所)と留学生を歓迎する。
質問回答サイト「オウケイウェイヴ」(東京)は今月、外国人留学生だけの就業体験(インターンシップ)を開始した。外国人の視点を新事業に生かすためで、評価が高ければ「卒業に合わせ、正社員で採用したい」(広報室)としている。
来日する留学生は年々増加しており、就職市場の留学生人気に「日本人の就職は本当に危ない」(楽天の担当者)という声も出ている。※〓は王へんに民
(東京新聞)(東京新聞:留学生 戸惑い奮闘中 :社会(TOKYO Web))