訃報
その訃報が届いたのは土曜日の朝でした。
朝早く来訪する客の予定があったのでその件かと思ったけれど
それは古い友人の死を知らせだったのです。
骨髄ガンで闘病していたのもしっていたし、
最後に電話で話した時に腹水が貯まるようになったと聞いていたので
この冬を越せるかどうか気掛かりでした。
九月になって最後の頼みと病院に入りこれが最後という強い抗がん剤治療を受けました。
コロナ禍で頼りとする同居人が普通に面会することもできない中、
辛い治療を一人で受けていたのです。
でもその甲斐なく、七日の朝永眠いたしました。幸いとも言えるのは
打つ手をなくした病院側は本人の意思を尊重して
帰宅することを許してくれたのです。
先日、良く晴れ渡った秋空の下を最愛の人に付き添われて
黄金に煌めく紅葉の山々の合間を抜けて、住み慣れた山奥の我が家に帰ってきました。
それが彼の最後の望みだったのでしょう。
彼女の用意したベッドに横たわり、
感謝の言葉を述べて
おやすみ
と声を掛け合った後、
そのまま永遠の眠りについたようです。
なんと美しく静かな死でしょうか。
願わくば自分も彼のように、と思わず考えました。
三十年前に初めてあった日のことを鮮明に覚えています。
でも不思議と涙は出ませんでした。
闘病で痛みに苦しんでいるのを知っていたので
楽になって良かったね、と言う気持ちの方が大きいのかもしれません。
私より七つ上。
まだ若い、とも言えますが
幸せな晩年だったはずです。
ただその幸せが病気と看護という形ではなく、もっと健康的な物であったら良かったのにと
ふと思うのです。
本当に個性的な人物でした。
憧れの先輩。
この人との出会いが私の人生を変えた、と言って過言ない
そんな大切な友人が今日灰になってしまいました。
今日からは私の心の中で生き続けるでしょう。
さようなら先輩☆
そして