4:30AM集合。車で北へ三時間、ロードアイランド州の農家で早食い競争の撮影・・・。こういうのも、ある。
迎えに来たバンに機材を積み込んで、初対面のドライバー氏にあいさつ。「どうぞよろしく。」大きめのバンで、ゆったりとしている。「いいですね、このバン、自分の車ですか?」「ええ、これでバンドのツアーに行くんですよ。」ダッシュボードにステッカーが貼ってある。Peelander-Z・・・「ぴーらんだーじーって、あなた、ぴーらんだーじー?」「そう、私、ぴーらんだーじー。」「オレ、あんた撮影したことあるよ、ニュージャージーで。」「おおーっ、あんときのー!」
三、四年前にニュージャージーで行われたアニメ・フェスティバルで演奏していたJapanese Action Comic Punk “Peelander-Z”。
当時まだマイナーな催しだったのをいいことに、バンドと一緒にステージに上がって、好き放題に撮影しまくった。
「あの頃、ステージから飛び降りて折った歯がまだそのままなんスよ、ホラ。」見覚えのある前歯の隙間が懐かしい。
早食い撮影を終えての帰り道、街道沿いのダイナーで遅い昼食。サウンドマンのH君が肉の焼き具合は?と聞かれ「ミディアム・レア」と答えたのを聞いて「オーイエーッ!」と叫ぶ。ウエイトレスが「何?彼のをもらうの?」と笑う。「オレ、ミディアムレアって聞くと嬉しくなっちゃうんだよ。」
彼らの曲に“S.T.A.K.E.”ってのがあって、その中で「ミディアムレアー!」って絶叫してたのを思い出した。「んー、あれは名曲だったね。」
「今日の番組に出てた大食いチャンピオンの××さんね、俺、以前テレビで彼が出てるのを見て、そのとき最後の勝負でコンディションが悪いのに彼はあえて脂っこいステーキを選んだんですよ。それに感動してあの曲を書いたの。で、××さんにもCDを送って、メールのやり取りなんかしてたんです。」
車の天井に全米ツアーのスケジュール表が貼ってある。ヴァージニア、テネシー、ジョージア、オハイオ、イリノイ・・・、ほぼ毎日予定が入っている。「すごいねー、毎日じゃん。」「毎日入れないと、メシ代とホテル代が大変なんすよ。」
大阪芸大を卒業後、ニューヨークに美術留学。絵を描いていた。「絵はね、音楽と違っていまいち反応がよく分からないんですよ。じわーっとくる感じかなー。もどかしくって目の前で絵を描くパフォーマンスしたりとかしてみたんですけどねー、そのうちバンドが忙しくなってきちゃって・・・。」学校を終えて就職した額裝屋で手に職をつけて、仕事には困らなかったけど、塗料が体に悪いので撮影のドライバーに転職したのだそうだ。
ツアーの面白いエピソードを聞いているうちに日が暮れてきて、ひきかえす気もない男達の生き方にうっとりしていたら、あっと言う間にニューヨークに着いた。
げんきがうれしい。