岩切天平の甍

親愛なる友へ

クリストファー・ヒル

2008年01月30日 | Weblog

ニューヨークから北へ車で四時間、マサチューセッツ州のアムハースト大学に、北朝鮮核問題をめぐる6か国協議の米首席代表クリストファー・ヒル国務次官補の講演を撮影に行く。

田舎の大学の純真そうな聴衆に、いかに北朝鮮が果たすべきを果たしていないかと説く姿を見ていると、つい、「では、北朝鮮よりはるかに強大なテロ支援国家の核危機はどうなんですか?」などと腹の中で言いたくなる。イランの事では無い、念の為。

撮影を終えて午前一時から東京へ伝送、午後二時終業、ホテルへ。





中野重治

2008年01月26日 | Weblog

 大江健三郎の講演集、“「話して考える」と「書いて考える」”を読む。
中野重治という戦中、戦後の左派文学者について話している。
プロレタリア文学運動、共産党を経て当局に逮捕され、「転向」を余儀なくされながらも思想弾圧と戦い続けた作家。

大江氏は中野重治の言う「民族道徳樹立の仕事。」ということに触れている。
『民族道徳という理念は、世界において普遍的なものです。ここで普遍的というのは、個別の実体が世界でひとつに定まっているということではなくて、具体的ないちいちは多種多様であるけれど、それらをつらぬく理念は世界につうじるものだということです。その多種多様である各民族、各国民の、民族道徳がこぞってめざす、ひとつのものがありうる、ということでもあります。たとえば、ヒューマニズムがそうです。・・・そしてそれから半世紀過ぎて、いま日本、日本人にどのような民族道徳があるか・・・。』

紀伊国屋に寄って探してみるが、中野も佐田稲子も無い。アマゾンで調べてみるとほとんどが絶版になっている。なるほど、売れない本は刷らないか・・。しかしそれが重要な作品なら、電子図書とか、何らかの方法で希望者が閲覧できる仕組みは出来ないものかとも思う。

古本屋サイトで全集を探して、何件かにアメリカまで送ってくれないかと打信してみた。北海道と関西から親切な返事が来た。全二十巻で三万円、送料が重量三十キロにつき三万円。値段はともかく、三十キロ、一冊一キロ半ですか・・。ほとんど旅行中の飛行機や電車の中で読むしなぁ、と意気地が萎える。
文庫本で我慢することにして、百円の古本を買うのに送料二千円はしかたないとしても振込手数料が四千円かかる。百円の本に六千円か・・。日本の古本屋もクレジット・カードとかペイパルに対応してくれないかなぁ・・。

結局東京に住む知人に迷惑を承知で泣きつく事にした。
快い承諾をいただき、感謝、感謝。本の到着が楽しみ。





ロケハン

2008年01月14日 | Weblog

ホテルのスイート・ルームで経済番組の座談会を収録したいとの依頼を受け、下見にでかける。

日本から来た、気持ちのいい制作陣に、最高のお土産を渡したいと願うけど・・・。狭いホテルの部屋に六人の出演者、時間と予算の制限、使える機材と技術スタッフの選出と、難題が山積だ。

そもそも経済番組の座談会にどれほどの映像が要求されるべきなのかといった論議にもなりかねない。
そしてカメラマンは仕事中に決して客を不安にさせてはいけない。
でも守りには入りたく無い。常に前向きにチャレンジの余地は残しておきたい、よなぁ・・・安全圏内でね。

客のニーズに合わせたプランの中で、要求よりも高いレベルの、しかも自分も納得できる仕事を・・・さてどうなることやら。



ジャンク・メール

2008年01月13日 | Weblog

写真家進藤修一氏のウェブサイト、「進藤修一の仕事場」の月例写真展。今月のお題は“年賀状”

これを撮ろうと、三年前から部屋の隅にたまっていったジャンクメール。カミさんの
呪いの言葉に押されてやっとネガになりました。で、また今年の袋を用意していると、背後でカミさんが仁王立ちで「何、それ?」とにらみつけております。トホホ・・・。


Pat Martino

2008年01月12日 | Weblog

バードランドでパット・マルティーノ・カルテット、 with Rick Germanson (Piano), David Ostrem (Bass), Scott Allan Robinson (Drums)

数年前にジャズ・ギタリストの井上智さんが教鞭を取るニュー・スクールで「パットが教えるから見に来れば?」と内緒で誘ってくれた事があった。授業はマスタークラス、最高レベルの生徒たちだ。

全てのコードをマイナー7thコードに置き換えて弾きまくるマイナーコンバージョン、ディミニッシュの音を一つ変えてドミナント7に変え、弾きまくる・・・理論の話はてんで分からない。

パットが説く理論を生徒の一人に弾いてもらう。最高クラスの生徒だからもちろん上手だし、楽器もほれぼれとするような音を出す。そしてそれに合わせて先生が弾き始めたところでケツを蹴り上げられた。

音の存在感がまったく違うのだ。言葉で言えないけど、なぜその音が存在するのかがはっきりと納得できる。楽器自体の音はむしろ生徒の方が良いようにすら思えるのだが・・・。
曲はモチーフに過ぎず、演奏は個性だ。作品に向かう演奏と作品から解放される演奏の違いを初めて意識した。

技術は基本であって、それを身につけて初めて自由になれる。肝心なのはそれからだ。これは音楽に限らないだろう。ヒザを打った。

パット・マルティーノ、六十四歳。
今夜こそがまた彼のベスト・プレイだ。



加湿器

2008年01月11日 | Weblog

加湿器が壊れた。
一シーズン持たなかった。
この前使っていたやつも二年持たなかった。

新しいのを買うべく、アマゾンのレビューを読みあさってみるが、“機能は良いが、壊れる”のオンパレード。うんざりして購買意欲も無くなる。

そこへ友人からメールが来た。「モノの物語」と言うサイトを見ろと言う。
モノの流通がいかに地球を蝕んでいるかという話。その中に、企業の多くがいかに自社製品を程よく壊れるように作るかに苦心しているという話があった。ホントかウソか知らないけど。

そう言えば、最近のモノがどれも妙に保証期限が切れた頃に壊れるような気がするのは気のせいかしら。


家電ショー

2008年01月05日 | Weblog

フロリダからラスベガスへ、毎年恒例の家電見本市の取材に転戦。

プレス向けの歓迎レセプション。振る舞われるパーティーフードをむさぼる太った男女に紛れて、一瞬、高い所から落ちる夢の急に足下を掬われたような喪失感に襲われる。なんで俺はここに居るんだろう。

矢継ぎ早に登場しては消えて行くモノ、モノ、モノ。辞書のように厚い説明書。悪戦苦闘している間に日々が過ぎて行く。
人間一人のキャパシティは限られていて、ひとつ新しい事を取り入れるとその分何かを失わなければならないんじゃないかと考えた事があった。
歴史の中の素晴らしい仕事たちをもはや我々が超えられそうにない様な気がするのは、一つの事に集中することが徐々により難しくなって行っているからではないのか。

ベートーベンに携帯電話の使い方を覚える必要は無かった。
いち抜けてみたいものだ。

明日の朝はジョギングをして、それから仕事をしよう。
仕事に入れば余計な事を考えているヒマは無くなるだろう。



一月二日

2008年01月02日 | Weblog

えー、いちがつ、ふつか、と。何してたっけ?
しらじらしい。
どうもすいません。

一月二日、
サブプライム・ローン問題を追って再びフロリダへ。
乗り継ぎのトラブルを避けるため、ジャクソンビルまで飛んで、そこからレンタカーでタラハシーへ、何時間も暗闇に真っすぐ浮かび上がり続けるハイウェイを、子供の頃ゲームセンターで遊んだみたいにひたすらなぞる。
つい先週、おむつを替えるレベッカを乗せてペンシルバニアを走っていたのが夢のようだ。

モーテルの駐車場でシートベルトを外しながら、長い間こんな風に走り続けて、万に一つの幸運で生き延びて来たけど、いつまでもそういう訳には行かないだろうなどと思う。

サブプライムローン問題、自業自得だ。