Bramwell Tovey 指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック。
ヨハン・シュトラウス二世作曲
“On the Beautiful Blue Danube”
待ちに待った夏の夜のワルツ。
実際のドナウはそれほど美しい川ではないとおっしゃる向きもありますが、そこは聴いてみれば解る。これは川の歌ではなくて、人々の命の流れを歌ったもの(なんじゃないかなー)。もともと男性コーラスの為に作曲されて、歌詞もあるそうだが、その内容を知らないので何とも言えませんがね。
席は例に依って二階中央最前列。うっしっしー!
夏の夜のクラシック・シリーズということで、リラックスした雰囲気。
マエストロもいつになく饒舌だ。
「シュトラウス二世はハンガリー語の喋れないウィーンっ子でした。え?そんなやついるのかって?いるじゃないですか、英語の喋れないジョージ・ブッシュみたいにね。」
「皆さん、ここを19世紀の舞踏会だと想像してみてください。幾千ものキャンドルの灯ったシャンデリア、着飾った紳士淑女たち。あなたもこーんな長くて真っ白なシルクの手袋でそのタトゥーを隠してね。いいですかー?それじゃ、行きますよー。」
ゆるりと船が出る。チェロのピチカートのさざ波が「あんなこともあったね、こんなこともあったね。」とささやくとホーンの大波が「そうさ、みんな一緒に生きて来たんだよ。」と包み込む。観客はゆらゆらと頭をゆらめかせ、ひらひらと手のひらを波打たせている。みんな一人一人のドナウを、それぞれのまぼろしを見ている。マリックの催眠術ショーみたいだ。一つになったうねりをマエストロが小さな指揮棒でドライブする。「ほーら、大波がきましたよー、ざんぶりこー。」
アンコールは当然ラデツキー行進曲。みなさんうっとりして家路につく。
地下鉄の駅にクラリネットでドナウを吹いている若者がいた。
サビの部分だけを繰り返し吹くと、ものすごい勢いで一ドル札が溜まっていった。いやー商売上手いね、にいちゃん。