結局ジャッキーはオバマ候補の減税案に強く魅かれているようで、
特に“チェンジ”に関心があると言うわけでも無さそうだった。
ささやかな経営者である彼女にとって最も切実な問題がそのことなのだろう。
そしてそれは誰もがそうなのだろう。
明日食べるメシの心配が苦しいのに、見た事も無い遠い国での戦争にも、
たった今まで続いて来た足下の八年間にもかまっている余裕は無い。
ダウンタウンのひなびたインド料理屋で夕食。
一通りの取材を終えて、あとは風景や街の表情を撮りながら、編集作業中の東京の指示を待つ。収録テープは逐次送ってある。
追加撮影のリクエストがあれば滞在を延ばすし、無ければ撮影終了となる。
「それにしても大統領選挙で人々が気にするのは結局金なんですかねぇ?」
「小さな事ばかり、それが人間さ。」
「相手の悪口ばっかりでねぇ。」
「思うんだけど、選挙資金って上限を決めるべきなんじゃないかな?
なんだかバカバカしいよね、あのキャンペーン。」
「そういう話もあるにはあるけど、言論の自由の妨害だって言うんだよ、それでもって敵がたくさん金を集めると、汚いって言うのさ。」
音声マンのKと街外れの街道沿いに見かけた“ジェントルメンズ・クラブ”に。
入り口で$15払って、ガヤガヤと猥雑な雰囲気を予想していたら妙に空気が澄んでいる。何か変だなと思いながらおねえさんに「ビールは何がありますか?」って訊いたら「お酒は無いのよ~。」だって!
周りを見るとおっさん達がコカコーラを飲んで、真面目な顔で座っている。
「おいおい、シラフで見るんかい!」
よく見るとかぶりつきの一等席に何だか小柄なやつが座っている。
「おい、あれどう見ても子供じゃないか?」
「いいですね~あんな年齢からこんな遊び覚えて・・・。」
野球帽をかぶった中坊はいちばん綺麗な踊り子さんを指名して、カーテンの向こうの別室に消えて行った。
「・・・・!」
「・・・・。」
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