岩切天平の甍

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米軍予備兵への責任

2003年04月11日 | Weblog

4/11/03 週刊金曜日投書欄
米軍予備兵への責任
ニューヨークから南へおよそ150キロメートル、米陸空軍の訓練基地「Fort Dix」へ、出撃前の予備兵が、親族と最後の別れをするセレモニーを取材に行きました。
  予備兵とは、普段は民間の仕事をしていて、有事に招集される登録兵で、召集後三週間ほどの訓練を受けて戦線へ配属されます。
  今、前線に出ている陸軍兵の約半数が予備兵で、湾岸戦争時には二六万人が動員され、今回のイラク戦争では、既に二〇万人が招集されているそうです。
  代わる代わるスピーチをする上官たちは、「君たちはイラクの人民の自由のために戦うんだ」と何度も繰り返し、「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌い、
牧師が祈りの言葉を読み上げます。兵士たちは無表情、家族は、どうしていいのかわからないようなこわばった微笑みで… いつか写真で見た、太平洋戦争の出征祝いの光景が目の前で起こっていました。
  父親の兵士に抱かれた男の子、今日のセレモニーをどう思うかと聞かれて、はにかみながら「Cool!(かっこいい)」と答えました。黒人兵士の母親、ブッシュ氏の方針を支持するかとの問いに、「しないわよ、必要のない戦争だもの、でもどうしようもない、今はただ生きて帰ってきてくれさえすれば」と涙をこぼし、白人兵士の母親はただ顔をゆがめて泣き続け、私のカメラのファインダーも、涙で見えなくなってしまいました。
  帰り道、カーラジオはイラクからのリポートを流し続けていました。
アメリカ兵の死傷者、捕虜、ブッシュ氏の演説… 「彼らの犠牲に感謝し、祈ります。」
  最前線に出る兵は一八歳から二五歳くらいが一番多いそうです。二〇歳の頃の自分に、どれほどのことが解っていただろうか。かつての日本兵の少なくない人たちが、死ぬ間際に「おかあさん、たすけて」と言ったという話を読んだ事があります。それほど違わないんじゃあないかと思うのは、感傷的すぎるでしょうか。
  彼らを死に追いやる責任は、私たち一人一人にあります。私たちは、この取り返しのつかない責任の重みを十分に自覚した上で戦争をしようと決め、支持すると言っているのでしょうか。この人たちを前にして、どんな顔で言えるのかと、そんなことを考えていたら、残念で、また涙が出てきました。どうもこの仕事には向いていないようです。