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NOVA:「給料遅配」だけはマズイです・・・・

2007-08-02 | 経営実務
英会話大手のNOVAで給料の遅配が発生したとの報道です。

NOVAの給与一部遅配 「システムトラブル」と説明(Yahoo!ニュース - 産経新聞)


誇大広告などで経済産業省から業務の一部停止命令を受けた英会話大手のNOVAで、7月27日に予定されていた給与の支払いが一部で遅れていたことが1日、分かった。また、社内規定で「業績に応じて6~8月に支給」としている賞与も、猿橋望社長名で「社内の経営態勢が整うまで協力してほしい」として支給を10月まで先延ばしすることを社員に伝えた(以下略)

同報道によればNOVA側も給料遅配の事実を認めているとのことです。報道の断片的情報だけで判断することは難しいですが、「給料遅配」というのは現従業員の生活に直結する重大な問題であり、コンプライアンスはもとより、労基法上も重大な問題となります。

労基法では、賃金の支払い方法について通貨で、直接、全額、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないとされています(賃金支払の五原則)。これは、日本においては国民に「勤労の義務」を課しており、国として「生活の糧は働いて稼ぎなさい」という方針をとっているために、その「生活の糧」である賃金の支払いについては、きちんとした生活の糧の確保が出来るよう、使用者側に対して上記の五原則をはじめとした非常に強い制限を設けています。(なお、賃金支払五原則への違反は30万円以下の罰金という罰則がもうけらられています)

また、一定の条件を満たす給料遅配・不払いの場合は「賃金支払確保法」による保護を受けられることとなっており、労働者の生活の安定と保護ができる限り行われるよう整備されています(ちなみに、賃確法の適用を受けてしまった事業所に対しては、労基署の監督官による送検処分が行われることが通例です。)

たった一日であっても給料の支給が遅れれば、従業員の生活には即座に影響を与えますし、何よりも「生活の糧が手に入らないかもしれない」という非常に強い不安を与えることになります。私は、従業員を一人でも雇った場合には、その瞬間から給料を確実に決まった日に支給するということが「絶対死守」のラインとなると考えます。これを守れないのであれば従業員を雇う資格は無いといわざるを得ないでしょう。

NOVAからはシステムトラブルという説明があるようですが、システムが動かなければたとえ多少の誤差が生じて「後で過不足の修正」を行うことになっても暫定的な金額を手作業で振込み支給することも出来るわけですから、これは全く言い訳にもなりません。今までの給料遅配の事例では「経営不振で、本当に従業員に払うキャッシュがない」という状況で起こっていたものですし、このような会社は当前の事ながら早晩倒産の憂き目に遭っています。

ちなみに、NOVAホームページのIR情報には、本日現在ではまだ本件に関するリリースが出されておりません。本件については、経営上の事項として株価にも影響を与える情報であり、適時開示が求められる事項になるのではないかと感じます(この点、適時開示に詳しい方がお見えでしたらご教唆頂ければと幸いです。)

NOVAについては、業務停止命令や信用の低下などで経営が相当に苦しい状態に追い込まれているということですが、一社労士としては今回のことで「企業として守らなければならない一線」を超えてしまったと言わざるを得ないと考えます。

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