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ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

有給休暇:「基準日に基づく付与」の留意点

2007-09-21 | 経営実務
今日は社労士業務からの話題を一つ。労務に関する事務は様々なものがありますが、その中の主要な一つの事務として「年次有給休暇の管理」があります。

年次有給休暇は、労働基準法に基づいて従業員に付与される休暇で「一定の範囲で従業員が原則として自由に取得する時期を指定できる休暇」です(但し、繁忙期など一定の理由がある場合には会社側に時期変更権が認められているので注意が必要です)。

年次有給休暇は「勤務開始から継続して半年経った時点」から発生し、その後1年を経るごとに新たな年次有給休暇が発生します。なお、時効の関係から一旦付与された有給休暇は、2年経過時点まで有効とされています。

年次有給休暇は(たとえ就業規則等に定めがなくても)自動的に発生する労働者の権利であり、後々のトラブルを避けるためには会社側としても適切に管理することが不可欠です。しかし、ここで注意しなければならないのが、年次有給休暇の付与の時期です。

先に述べたとおり、労働基準法上の年次有給休暇は「勤務開始から継続して半年経った時点」で発生するとなっています。これは、すなわち採用の日が異なる労働者ごとに、年度ごとの有給休暇の発生日が異なってしまうということを意味しています。法律の定めをそのまま間に受けて管理しようとすれば、毎年新たに付与される日がバラバラになってしまうことから、実務上の負荷も大きくなり、また、ミスも発生しやすくなってしまいます。

このため、労働実務上は「1年度内に有給休暇を付与する基準日」を設け、入社日に関わらず、この基準日において一斉に有給休暇を付与する方法を採用することが一般的です。この方法では、新たな有給休暇の付与を概ね「1年に1回のルーチン・イベント」として集中的させることが可能であり、事務ミスの防止に繋がります。
実際、私の関与している顧問先の皆さまもこの「基準日方式」による有給休暇の管理を行っているところがほとんどです。

しかし、この基準日方式を採用する場合、労働基準法との兼ね合いから次の2点については注意を要します。

【注意点1】 基準日で付与される有給休暇の日数は「前倒し」にしなければならない


従業員に付与しなければならない有給休暇の日数は「勤続年数」ごとに異なります。労働基準法では、付与すべき日数を「0.5年目に10日、1.5年目に11日、2.5年目に12日・・・・・6.5年目以降は1年ごとに20日」と定めており、付与する時期に合わせて日数が決められています。

しかし、基準日付与方式で行う場合には、基準日における勤続年数が「1年2ヶ月」「3年8ヶ月」等中途半端な月数となってしまいます。このような場合には、基準日において「次に到来する時期に付与しなければならない日数」を前倒しして付与しておなければなりません。これは、本来の付与対象日(○.5年経過日)になった時には本来付与すべき日数を満たしていなければ、従業員にとって不利=労働基準法違反となってしまうためです。

【注意点2】最初の半年の取り扱いには注意が必要!


基準日を年1回しか設けない場合、入社の時期によっては基準日より前に「0.5年経過日」が到来してしまうケースがあります。この場合、基準日とは関係なく「10日の有給休暇」を付与することが求められるので、そのままの状態では若干の事務手間がかかってしまいます。

もちろん、この影響は最初の0.5年目だけの話しですので「従業員の出入りが少ない会社」であれば大きな問題とはなりません。しかし、従業員が頻繁に採用される会社の場合には、このままの状況では折角の「基準日による事務集中化」のメリットが半減してしまいます。

これを回避するためには、「0.5年経過時点についてのみ、通常とは異なる基準日をもう一つ設ける」「予め年2回の基準日を設け、入社時期によってどちらの基準日を使うかを選択する」などの方法があります。これらの方法を活用することで、事務の集中化のメリットを最大限に引き出すことが可能となります。


労働実務上で考えると、有給休暇の付与モレそのものを原因としてトラブルになることは少ないでしょう。しかし、従業員との間で労働トラブルが発生した時に、適切に有給休暇の付与・管理が行われていないと、無用なトラブルの種を一つ増やすことに繋がってしまいます。たかが1日の違いと侮ることなく、簡単にできる工夫を活用しつつもしっかりと管理を行っていくことが、労働トラブル防止の第一歩につながっています。

なお、有給休暇についてはこの他にも「斉一的付与」や「退職を控えた従業員への付与」「パートタイマーへの付与」等様々な論点があります。有給休暇の管理や従業員からの有給休暇の請求にお困りの方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問合せください。


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