よれよれ日記

谷晃うろうろ雑記

見慣れた景色が、つまらないとは限らない。

2007年04月30日 | Weblog
日曜夕方の情報番組で、収容所を脱出した青年のインタビューを見た。

彼は二十台半ばなのだが、50年に及ぶ収容所の歴史の中で、収容者同士の男女の間に生まれ、二十二歳で脱出するまで外の世界の生活を知らなかったという。

トウモロコシと白菜のスープしか食べたことがなかった。母と兄が脱出に失敗し、彼は拷問を受け、父親と一緒にその二人の死刑執行に立ち会わされた。

外から収容所に入ってきた同年輩の人物から、外の自由な世界の話を聞き、彼と脱出を試みる。電流の流れる鉄線に触れその友人は倒れるが、その体を踏み越えて彼は走り続け他国へ逃れ出た。

今自由な社会にいて、スタジオに再現された「収容所の部屋」を見て、ああこんなだった、こんな部屋に二十二年間居た、と言う。

収容所のある国よりは、収容所のない国のほうが暮らしやすいに決まっているが、収容所のない国にだって、してはいけないこと、すすんでやるべきこと、があるように思う。

JRの車両の中で婦女暴行を許した乗客とか、投票率が半分以下の首長選挙とか。
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連休になってすることもないが、人出の多いところに行くのもわずらわしいので、若葉の頃なのに「紅葉」の名所に行ってみた。狙い通り人はいないし、あてにしていた食堂まで閉まっていたが、秋に紅葉を楽しむはずの木々の緑があまりに初々しく瑞々しく楚々として美しいのに驚いてしまった。
 紅葉だけ人ごみに押されてあくせくながめるのはもったいないことをしているのではと思った。

 行くときはずいぶん奥深い山の中と思ったが、帰り道は道の様子も頭に入っているのであっさり高知の町に帰り着いてしまった。
 辺りを見回して、ほんのついさっきまでいた奥山の木々の若々しい緑はないけれど、これはこれで見慣れているだけであって、決してつまらない景色ではないなと思う。

すくなくとも収容所は見あたらないのだから。




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