富士山は自然そのもの。
雪が積もって真っ白い鬼になることもある。
雪が消えて黒い岩山に化けることもある。
山頂部に雲をなびかせることもある。
同じ山の裾野の広大さと、雲の上にそびえる孤高の雄峰が一つの存在の両極にある。
その両方を受け入れる人間の心性にも、そのふたつが宿るのかもしれない。
われわれの短い生命も、猥雑なふもとの暮らしと、非日常の天空の見晴らしに引き裂かれていることを、実は受け入れている。
富士山も生まれたからには、死ぬ日がくるかもしれないが、われわれはとてもちっぽけで、山はでっかい。