出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

年始の取次

2009年01月06日 | 出版の雑談
あけましておめでとうございます。今年も「出版屋の仕事」をよろしくお願いいたします。

年明け早々、新刊の見本納品に行ってきた。本当は去年の11月頃に出したかった本で、それが不可能になった時点で「年始気分が抜けた頃に見本出しに行こう」と考えていたんだが、著者が「13日書店発売」と前宣伝してしまった。なんとなくスケジュールの話をしているうちに出てきた日付を勘違いされるという、初めて出版する著者にはよくある話ではなかろうか。実際のスケジュールはきちんと説明してるんだが、ワクワクして混乱するのかもしれない。

で、見本納品自体はいつもと変わらなかったんだが、初めて「年明けの取次」を経験した。ずいぶん前に、日販の年始の会か何かに紛れ込んでしまった(勘違いして参加してしまった)ことがある。見知った顔をみつけて挨拶をしまくる会なんだろうと思うが、土産だけもらって帰ってきた記憶がなきにしもあらず。

今回は会ではなくて、いつも行く仕入部である。年末休みのときから5日に見本納品に行くつもりではいたんだが、当日になって「ゲッ! 初日じゃん」と気づいた。迷ったんだが、本日6日の午前中に用事があったので、まあいいかと思ったわけである。ブックライナー伝票切替のときに新刊の予定の話も出て、「正月気分が抜けた頃に・・・」と言ったら「いや、(年明け早々から)普通に営業してますから」と言われたことを覚えていたせいもある。

まあ、やっぱり年始の挨拶をしている人たちもいるだろう・・・くらいに思って行ったら、これが大間違い。

まず日販に行くと、エレベーターに乗り合わせた「いかにも版元」3人組のひとりが年賀の包みを持っている(何やら和菓子かせんべいの様子)。うーん、手土産まで気が回らなかった私も悪いが、こちらはただの見本納品だし、願わくばいつものカウンターはいつも通りであってほしい。

が! 仕入部の右側の入り口から覗くと(3人組の後ろから)、なんとカウンターの内側は並んで起立、そしてカウンターの前には「いかにも年始の挨拶組、それも1社で10人くらい」。そして、その10人組が、団体競技が終わって順番に握手をしていくときみたいに、列になって頭を下げながら移動し始めたのである。3人組はちゃんとわかっていたようで、10人の握手行列の邪魔にならないように、横に退いていた。

まあどこかの大手さんかも。全員の握手行列(正確にはお辞儀行列)が終わったら、カウンターの中は座ってくれるんだろうと思ったら、これまた大間違い。中は立ったままで、3人組も行列組と同じように立ったまま挨拶を始めた。

結論を言えば、3人組が終わった後、まだ立ってるカウンター内の人の中に知った顔があったので、近づいてぼそぼそと「今日、普通の見本納品できますか?」と尋ねたらOKだった。年賀ぐらい持ってこいよと思われたかもしれないが、もうとっとと用事を済ませて帰りたかったので、無視してその人の前の椅子に座らせてもらった。

見本納品を終えて気を取り直して、大阪屋へ。こちらも年始組はいるだろうと思ったら、やっぱりカウンターの外側の椅子や普段待つときのソファが片付けてある。カウンターの中の人たちが立っているのも同じ。が、同じく手前の人にぼそぼそとたずねて、その人に見本を出す。一応、知ってる人がいたら挨拶しようと思ったんだが、いなかったのでそそくさと帰る。

ちょっとした時間差だと思うが、1階まで降りたらエレベーターの前が大混雑で、建物の入り口まで人があふれていてビックリ。受品口のお兄さんに挨拶をして、トーハンに向かうために太洋社の前の道を走っていったら、歩道が「いかにも版元」の人たちであふれていて、またまたビックリ。

トーハンでは、こっちも同じで年始組であふれているだろうと思って、すいているいつもの受品口の入り口から入る。祭りで仲良しになった警備の人がいて(シフト制なので会えないときのほうが多い)、こりゃ幸先がいいと喜んで、受品口のお兄さんたちにも挨拶してから6階へ。

最近は6階まで裏のエレベーターで上がるので、社内を縦断して仕入部まで行く。つまりカウンター付近の様子はよくわからなかったんだが、行ってみたら、こちらもやっぱり立っている。おまけにいつもカウンターにいる人だけじゃなくて、その中にいる人まで(体育会まで)。

もう3社目なのでやけくそで、立ってる人たちにはお茶を濁すようにちょろっと頭を下げて、端の人に見本納品のお願いをした。本日、カウンターは年始挨拶のためのものなので、ロビーへ移動してなんとか受け取ってもらう。

普段、ドキドキしながら「○○日搬入××冊と書かれた紙」や「毎日の新刊点数のグラフ」を眺めたり、他社の営業の人たちを盗み見するのも嫌だが、年始はもっと嫌であった。これに懲りて、もう2度と初日に仕入部に行くなんてことは考えない。

いや、逆に、来年はちゃんと年始の挨拶に行ってみるかと思わないでもない。が、ひとりで行って、あのスタンディング「挨拶を待ってるカウンターの人々」にどう挨拶するか、考えるだけで冷や汗が出る。

帰ってきてから思ったんだが、本当にずうっと立ってるんだろうか。午後になったら挨拶組はもっと増えるかもしれないけど、そうなるともしかして1日中???  それはともかく、年始の挨拶を適当に済ませちゃってすみませんでした。