残り木(2025.3.2日作)
人生の終末
命を取り巻く総てのもの達が
光りを失い 影を薄くして やがて
消えて行く
幼き日々の学校友達 級友
仕事仲間の誰 彼
学術 芸能 スポーツ
それ等の世界の あの人 この人
揚げ句の果ての 長の連れ合い
共に日々を過ごした 妻 夫
総てのもの達が光りと力を失い
やがて 消えて行く
昨日は彼の地で 今日は此の地で
消えて行くもの達
残されし者の歳月 あと幾年月
長い歳月生きて来て 日毎 年毎
細りゆく身の 残り木
今日も寂しさ抱え
命の限りを生きてゆく
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<青い館>の女(30)
「こっちにぃエレベータ―が有るからぁ」
加奈子はすぐにわたしを自分が出て来た廊下の陰へ導いた。
人目を気にしているらしかった。
黒いミニスカートにピンクが淡い薄手のセーターが露骨なまでに身体の線を見せていた。
それがわたしの欲望を刺激した。
わたしと加奈子が前に立ったエレベータ―のドアの上には緑色の小さな明りが「Ⅰ」の数字を見せていた。
加奈子は「上」へのボタンを押してドアを開けた。
他に乗る人の居ないエレベータ―はすぐにドアが閉まって、加奈子は三階のボタンを押した。
「ずっと下で待ってたの ? タクシーを降りて三階の部屋を見たら暗くなっていた」
上昇するエレベータ―の狭い空間で、漸く加奈子を捕まえ得た安堵感と共に言った。
「そうじゃなくてぇ、部屋に居たんですけどぉ、タクシーが停まるのが見えたのでぇ、急いで降りて行ったんですよぉ」
エレベータ―の上昇する数字に眼を向けたまま加奈子は言った。
その背中がわたしの眼の前にあった。
わたしは狭い空間でそれを意識すると、身体の線をあからさまに浮き出した服装共々、またしても欲望を刺激されて背後から力の限り抱き締めたい誘惑に駆られた。
一方でわたしの意識はまた、明確な自覚の下に自身の不可能性をも認識していた。
それがわたしを若者達と同じ性急な行動には走らせなかった。
わたしは心の裡で揺れ動く感情を抑えたまま、努めて平静を装って言った。
「タクシーが停まった時、慌てて逃げて行く男が居たけど気が付かなかった ?」
加奈子はその言葉で、初めてわたしの方へ顔を向けた。
「そうなんですよぉ、あの男なんですよぉ」
困り果てた様な表情を見せて言った。
「何時もあそこに、ああして居るの ?」
「何時もではないけどぉ、時々、あんな風にしてぇ、わたしがお店から帰って来るのを待っていたりするんですはよぉ」
「警察に訴えた方がいいよ」
わたしは言った。
加奈子がその言葉に応える前にエレベーターが停まった。
わたし達は廊下を歩いて加奈子の部屋へ行った。
誰にも会わなかった。
ベッドが有る部屋と食卓の有る二つの部屋が加奈子の居住空間だった。
それぞれ四畳半程の広さだった。
ベッドの有る部屋には狭い空間を埋め尽くして、姿見やテレビ、小さな箪笥などが置かれていた。
「すいません、これに座って待っててくれますかぁ。今すぐコーヒーを淹れますからぁ。インスタントコーヒーなんですけどぉ」
加奈子は狭い部屋に立っている私の足元に姿見の前に有った赤い丸椅子を差し出して言った。
部屋の中にはその色と同じ、姿見を覆った布のビロードの赤の他にはこれと言って若い女性らしさを感じさせる華やかな飾り付けは何も無かった。
仕事柄、兎角、想像し易い男の存在を思わせる様な物もまた、無かった。
何処となく倹(つま)しささえが感じられる部屋の佇まいだった。
加奈子がコーヒーを淹れる為に隣りの部屋に行った後、わたしは椅子に腰を下ろしたまま、先程、通りから見上げた部屋の窓辺に視線を移した。
そこには桜色の濃淡で花柄が描かれた厚手のカーテンが、部屋の灯りの一寸でも漏れる事を恐れるかの様にぴっちりとした形で引かれていた。
これでは、たとえ、部屋に明かりが点っていても外からは見えないかも知れない。
なんとなく納得する思いだった。
その夜、わたしと加奈子は加奈子が男を警戒するままに、ホテルへは行かずに部屋で過ごした。
最初は男の存在に神経を尖らせていた加奈子も時間の経過と共に次第に落ち着きを取り戻して来て、普段の加奈子に戻っていた。
軽くコーヒーを飲んだ後、加奈子はふと思い出した様に、
「ちょっとぉ、今、お風呂の支度をして来ますねぇ」
と言って席を立った。
思い掛けない加奈子の言葉だった。
わたしはこの部屋ではそこまでは期待していなかった。
加奈子に取っては、それでも十万円を手にする為の出来得る限りのサービスの心算なのかも知れなかった。
風呂のある場所は食卓のある部屋のその奥にあった。
こじんまりとした湯船だったが、風呂の湧いた事を知らせる甲高い音が聞こえると加奈子は、
「あっ、お風呂が出来ました。一緒に入りますかぁ」
と言って、悪戯っぽい眼でわたしを見た。
その表情は明らかに外でわたしが会う加奈子そのものになっていた。
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takeziisan様
年金者待ちぼうけ
何時になたら 春が来るやら
菓子の下 菓子も黒い菓子ですかね
川柳 良いですね 遣る気がある内はまだ若い
遣る気を失くしたら総てが終り
これからも期待しております
まだ出来る もう出来ない 大違い
まだまだ遣るんだ 出来る 諦める心算は無い
人生 心の持ち方次第
四月は別れと出会いの季節 昔を思い出し
なんとなくほろ苦い季節 その陽気と共にまた期待の季節
土筆 出ていますか 懐かしい姿 今ではこうして見るより
見られません
山の写真 何時見ても 何度見ても心 洗われ 惹かれます
気持ちが和みます
これまで行った旅先の風景等に重ね合わせ
思い出しながら画面を拝見しています
花の街 懐かしいですね
子供の頃によく耳にした歌です
ラジオから流れて来た当時が懐かしく思い出されます
穏やかな時間の流れ 再びは帰らない過去です
楽しい画面 有難う御座いました
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