goo blog サービス終了のお知らせ 

遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉 210 芽ばえ (前回作 若干の訂正)

2018-10-07 12:49:16 | 日記

          芽ばえ(2008.10.5日作) と 前回作の若干の訂正

 

   1 その人は片田舎の小学校の教師だった

     二年生の担任だった

     笑顔の優しい女の先生だった

     それから四年が過ぎた

     その人は隣村の県道沿いの貯水槽で

     ある夜 自殺した

     着物のたもとに県道に敷かれた砂利石を入れて・・・・

     なぜなのか 理由を知る事は出来なかった

     ただ 驚きと共に 心にさざ波が立ち

     哀しみが小さな笹舟のように走った

   

   2 その人は小学校五年生の担任だった

     先生というよりは年の離れた

     姉という感じの人だった

     年配の教師達の多い中で若さと共に

     その美しさが心に残った

     ある放課後 その人は教室の窓辺に立っていた

     当時 盛んに唄われていた「憧れのハワイ航路」を

     わたしが口ずさんでいるのを耳にしたその人は

    「その歌の小説を持っているわよ。貸してあげようか」

     と言った

     -----

     本を借りる事はなかった

     後年 その人は他校へ転任になり

     わたしは中学校三年生になっていた

     そんなある日 偶然 県道でその人と

     お互いが自転車ですれ違った

     その人とは ただ 目礼をしただけだった

     正面からその人を見る事が出来なかった

     胸の内に走る かすかなトキメキを覚えていた

     -----

     以降 その人と再び会う事はなかった

     消息を聞く事もないままに時が過ぎた

     なぜか心に残る少年の日の思い出

 

          面影の 人は遠くに 木犀花

 

     (前回の文章中 寺田寅彦「作」を「の言葉」と変更します

      また 災害は忘れた頃にやって来る を 天災は・・・と変更します

      愚作の災害は という言葉に引きずられ つい 災害と書いてしまいました)