原題:『真夜中の五分前』
監督:行定勲
脚本:堀泉杏
撮影:中山光一
出演:三浦春馬/リウ・シーシー/チャン・シャオチュアン
2014年/日本・中国
物語が凝りすぎて訳が分からなくなったサスペンスについて
話は姉のルオランと妹のルーメイの一卵性双生児の幼少の頃の出来事から語られる。ルーメイが庭で遊んでいたルオランに服を変えようと誘って服を着替えた直後に、母親から窓ガラスを割った犯人扱いされてルオランは連れていかれ、その2人を背後からルーメイが見つめているのである。
主人公の良(リョウ)は中国の上海の時計店で修理士として働いている。通っているプールでリョウはルオランと出会い、女優としてデビューしたばかりの妹のルーメイが映画プロデューサーのレオン・ティエンルンと婚約したお祝いのプレゼントを選んでくれるようにルオランはリョウに頼む。リョウは悩んだ末に自分で制作した時計を選ぶのであるが、時計を贈ることは死を連想させるために中国ではありえないことをリョウは後で知らされる。
ルオランはルーメイと一卵性双生児であるが故に、例えば、選ぶ服も似てしまうため、自分のアイデンティティの不確かさに悩んでいる。一方、リョウは恋人を亡くしており、5分時計を遅らせて合わせることが好きだった彼女のクセを踏襲している。
ここまでの伏線の張り方は良いのだが、その展開の仕方からストーリーは迷走し始める。ルオランとルーメイの2人が旅行先のモーリシャスで事故に遭い、ルーメイは助かったものの、ルオランは亡くなってしまうのである。その1年後に、リョウは結婚したルーメイとレオンに再会するのであるが、レオンはルーメイが実はルオランなのではないかと疑っている。
確かにルオランは泳げるがルーメイは「金づち」であるからなのだが、分かりにくい点として、5分時計を遅らせて合わせることが好きだったリョウの彼女のクセをルオランが踏襲しているのかどうか不確かで、伏線としては活きていないことと、映画館前でルーメイのファンに囲まれていたルオランを助けたレオン自身がルオランをルーメイと間違えて服をプレゼントしていることで、当初、ルーメイはポルトガルの詩人であるフェルナンド・ペソア(Fernando Pessoa)の詩を引き合いに出し、人は他人の中に自分自身を見つけるだけなのだとして慰めていたのであるが、やがてルーメイ自身が自分がルーメイなのかルオランなのか分からなくなってしまい、これでは答えのない問題を解かされているようなもので、サスペンスにもミステリーにもなっていない小難しい作品になってしまっていると思う。