MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『パラレルワールド・ラブストーリー』

2019-06-10 19:05:30 | goo映画レビュー

原題:『パラレルワールド・ラブストーリー』
監督:森義隆
脚本:一雫ライオン
撮影:灰原隆裕
出演:玉森裕太/吉岡里帆/染谷将太/筒井道隆/美村里江/清水尋也/石田ニコル/田口トモロヲ
2019年/日本

「パラレルワールド」を生きる主人公の感情について

 描くことがなかなか難しい「パラレルワールド」をここまでまとめたことには敬意を表したいと思うが、「記憶の混濁」に関する理解の困難さを感じる。
 三輪智彦は「バイテック社」で人間の記憶を改竄できる光照射の研究をしており、同僚の敦賀崇史も同じ会社の別のチームで研究しているのだが、2人は幼なじみで体が弱い智彦を手伝うために崇史は智彦の部屋の鍵を預かるほど仲が良い。
 ある日、崇史は智彦から同僚の篠崎伍郎に光照射を施したら実際は太った中年の男性だった小学校の先生が若くて背の高い女性に記憶が変わったという話を聞いた。その後、篠崎が会社の食堂で倒れ、自分が東京出身だと大声で主張するのだが、実際は広島出身で、篠崎は智彦たちに運ばれた後、会社から姿を消してしまう。ここで「実験」は失敗していることが明かされており、深夜に智彦が篠崎の死体のようなものを車に乗せるところを崇史は部屋から目撃している。
 その間、崇史と智彦の関係も津野麻由子を巡ってこじれてしまう。実際は智彦の論文を読んだ麻由子が智彦と会って交際が始まったのであるが、その前に崇史は麻由子と通勤時にそれぞれ乗っていた山手線と京浜東北線が並んだ際に毎日のように窓越しで偶然出くわしていてお互いに好意を持っていたのである。
 崇史と麻由子がお互いに好意を持っていることを察した智彦は崇史を自分の研究室に呼んで自分が麻由子を諦めるために記憶を改竄するのを手伝って欲しいと頼む。智彦は「愛情」よりも「友情」を選んだのであるが、その途中でシステムエラーが発生して智彦はスリープ状態になってしまうのである。ここでも「実験」は失敗している。
 ここまではまずまずのストーリー展開だと思うのだが、友情に厚い智彦のことだけでなく会社のトップシークレットを知ってしまった崇史がパニックになって自分の記憶を消す行動に出た後のストーリー展開がよく分からない。崇史は既に2回も「実験」が失敗していることを知っているにも関わらず、不完全な装置で実験を試みようとする気持ちが理解できないし、崇史の教官である須藤隆明が麻由子に恋人を装って「スパイ」を頼むわりには、レストランで撮った崇史と智彦と麻由子の写真を事前に処理していなかったり対応が甘いのである。やはりよくよく考えると粗が見えてしまうのが「パラレルワールド」を描く限界ではあろう。


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