「健さん」モントリオール映画祭ワールド・ドキュメンタリー部門で最優秀作品賞!
原題:『健さん』
監督:日比遊一
撮影:戸田義久
出演:高倉健/マイケル・ダグラス/マーティン・スコセッシ/ジョン・ウー/ヤン・デ・ボン
2016年/日本
高倉健という「イメージ」を巡って
高倉健の演技に関して「まるで一流のミュージシャンが楽器を操るように、高倉健は身体を操る」と表現したマーティン・スコセッシの、ロックミュージシャンの映画も多数撮って来た彼らしい見解が心に残る。
90歳まで存命だった高倉の母親は自分の息子が「日本一」になったことを喜んでいたことを高倉の妹が証言していたが、それでは何故高倉は「世界一」になれなかったのだろうか。例えば当初、ヤン・デ・ボン監督によって制作が進められていたハリウッド版『ゴジラ』に高倉はキャスティングされていたものの、予算の面で折り合いがつかず企画そのものが流れてしまったものはともかく、『サムライ』(ジャン=ピエール・メルヴィル監督 1967年)のリメイクをジョン・ウー監督が企画して出演を打診した時も、『沈黙』(マーティン・スコセッシ監督)の出演の打診も高倉は断ったようだ。『ザ・ヤクザ』(シドニー・ポラック監督 1974年)で脚本を担ったポール・シュレイダー監督によるならば、『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(1985年)を監督するにあたり、高倉に主人公の三島由紀夫を演じて欲しいと要請した際に、高倉本人はやる気があったようだが、周囲の「取り巻き」に止められたようである。どうも「高倉健」というイメージを外国人に好きなように使われることを快く思わない人間が少なからずいたようで、高倉健の海外進出を阻んでしまった嫌いがあり、結果的に『ブラック・レイン』(リドリー・スコット監督 1989年)以降は、『ミスター・ベースボール』(フレッド・スケピシ監督 1992年)のような高倉のキャラクターと全く合わないような作品に出演してしまっているのであるが、その「取り巻き」が誰だったのかまでは本作では追及されてはいない。