MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ガタカ』

2015-08-29 00:55:54 | goo映画レビュー

原題:『Gattaca』
監督:アンドリュー・ニコル
脚本:アンドリュー・ニコル
撮影:スワヴォミール・イジャック
出演:イーサン・ホーク/ジュード・ロウ/ローレン・ディーン/ユマ・サーマン
1997年/アメリカ

「適正者」と「不適正者」が見る同じ「悪夢」について

 本作の主人公は2人いる。近未来において遺伝子工学の進歩によって自然出産で生まれたにも関わらず心臓が弱く遺伝子的に劣った「不適正者」として生きなければならないヴィンセント・フリーマンと、それでも宇宙飛行士になりたいというヴィンセントのために自身の血液や体液や体毛のサンプルを提供する契約を交わした、遺伝子操作で生まれた最強の「適正者」のジェローム・ユージーン・モローである。
 対照的な2人を繋ぐものは、本人たちは気がついていないようだが「水泳」である。ヴィンセントの「失敗」を反省して、ヴィンセントの両親は弟のアントン・フリーマンを遺伝子操作によって「適正者」として産み、アントンは優秀で完璧な人間として成長する。決して弟に負けているとは思わないヴィンセントはアントンと遠泳で競い合い、何度も負けた末にようやく気力でヴィンセントはアントンに勝つのである。一方、「適正者」であるユージーンは優秀であることが宿命づけられているのであるが、スーパースターの水泳選手でありながらなかなか一番になることができず、思い悩んだあげくに自殺を試みるも失敗してしまい車イスの生活を余儀なくされる。要するに「不適正者」のみならず「適正者」でさえその重圧に耐えられない世界になってしまっているのである。
 だからヴィンセントが「ユージーン」として息苦しい地球を「脱出」した後に、いまや半身不随の「不適正者」であるユージーンが戦いの象徴である銀メダル(写真下)と共に自分自身を焼身自殺で「消して」しまうことが「適正者」しか一人前の人間として見なされない世界におけるごく自然な反応に見えてしまうのである。これほどの傑作が興行的に大失敗したとは信じられない話である。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ビッグゲーム 大統領と少... | トップ | 『サンダーバード Are Go』 »
最新の画像もっと見る

goo映画レビュー」カテゴリの最新記事