007 スカイフォール
2012年/アメリカ
外見と中身のギャップについて
総合 90点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
007が鉄橋から滝に落ちると同時にアデルによる主題歌を挟み込むサム・メンデス監督のセンスの良さを感じる。「ボーン」シリーズや「ワイルドスピード」シリーズの要素を上手く取り入れてとりあえず派手なアクションで冒頭を飾っておきながら、ジェームズ・ボンドはMI6のボスであるMに誤射してもかまわないと命じられたイヴにより撃たれて川底に沈む。後にMに裏切られたとしてラウル・シルヴァがMを襲うのであるが、実はMに裏切られたのはシルヴァだけではなく、ボンドも同じであり、だからシルヴァはボンドと手を組んでMを襲うつもりだったのであろう。しかし冒頭で撃たれて血を流しているロンソンの手当をしようとするものの、彼は放っておいてハードディスクを盗んだパトリスを追えとMに命じられるボンドは既に自分の携わっている仕事が非情なものであることは分かっているのである。
MI6の本部が襲撃されたことをテレビで知ったボンドはロンドンに戻るものの、適性検査で精神的にも肉体的にも不合格になるが、Mの計らいによって任務に就けることになる。この時、ボンドは自分が既にスパイとして適性を欠いているほど老いていることを知ることになるのであるが、それはまるでQと密会した美術館において座っているボンドが眺めている、軍艦が描かれている絵画は寂れてはいても美しく見えるものの、実際に上陸した軍艦島内は荒廃しているという事実を見せ付けられることと符合するのである。
Mに裏切られながらもボンドがMを救う理由は、スコットランドのグレンコウのボンドの生家であるスカイフォールに隠されていた。幼い頃に父であるアンドリューと母のモニークの両親を失っていたボンドは孤児というだけでスパイの素質をMに認められる。そのような相手に裏切られたならば、銃口を頭に当ててMと心中しようとするシルヴァのような身振りをとってもおかしくはないのであるが、Mに対してマザコンのような醜態を晒すシルヴァを通して逆にボンドの冷徹なクールさが浮き彫りにされる。しかしそれはただ2人の素質の違いというだけではなく、味方に撃たれたまま行方をくらました者と、歯に仕込んであったシアン化物で地獄の苦しみを味わい、自死しきれなかった者とによる‘死に際’の優劣でもその後の生き様が左右されることになるのである。
Qからは最新鋭と謳われる武器を持たされることがなく、いつものワルサー拳銃と発信機だけだった理由は、サイバーテロにおいてはどんな最新の武器でさえも無意味だからである。サイバーテロリストとしてのシルヴァの能力を削ぐために、ボンドは自分の‘レトロ’な戦い方が出来、‘サイバー’の威力が及ばないスカイフォールを決戦の場所に選び、アストン・マーティンDB5で向かう。死闘の末に最後はジャックナイフで辛勝するものの、Mを救うことは出来なかったが、すぐにMは新任のMに取って代わる。その部屋には数隻の帆船が出航する絵画がかけられており、引退の潮時であるはずのボンドの、アルフレッド・テニスンの詩を胸に秘めながら自身のオールドスタイルを貫く強い意思が次作で観られるのであろう。
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