原題:『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』
監督:高橋渉
脚本:中島かずき
撮影:梅田俊之
出演:矢島晶子/ならはしみき/藤原啓治/こおろぎさとみ/真柴摩利/武井咲/コロッケ
2014年/日本
「腕力の時代」の終焉について
家庭での立場が弱くなってしまった日本の父親達の復権を目論む組織である「父ゆれ同盟(父よ、勇気で立ち上がれ同盟)」の陰謀に巻き込まれた野原しんのすけの父親であるひろしがメインキャストを務める本作は、子供の付き合いで仕方なしに観に行っていたはずの父親の方が夢中になって観てしまうような作風である。
ギックリ腰の治療のために行ったエステサロンでロボットにされたひろしは、当初は「ロボとーちゃん」として家族から重宝され、しんのすけたちの命を救うなどするのであるが、その「腕力」の強さは「ヒゲ」を付けることで慢心を持つに至り、必然的に過去を振り返ることになる。おそらくそれは例えば、五木ひろしが改名して全盛期を迎える高度経済成長の昭和の時代であり、1970年代の演歌が身に染みていた頃で、しんのすけたちが演歌に「感染」する際の虹色は当時流行った「サイケデリック」ではあろうが、それほどあくの強いものではなく、例えば以下のようなイメージである。
クライマックスの生身のひろしと「ロボとーちゃん」の腕相撲対決は、予想に反してひろしが勝つのであるが、それは腕力によるものというよりも、「腕力の時代」が終わっていることをロボとーちゃんが察したからに他ならないであろう。