映画は映画だ
2008年/韓国
究極の映画の‘甘美さ’
総合 80点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
スクリーンに映し出されることで表現される映画がまさに‘光’を表すのならば、さしずめ現実は‘影’とされるのであろうが、だからと言ってヤクザのイ・ガンペだけがその‘影’を背負うわけではなく、俳優のチャン・スタでさえプライベートはかなりの制約を受けてしまい、演技と称して意図的に何度も殴ってきた相手の俳優を思いっきり殴って怪我を負わせたことで一方的に非難を受けたり、恋人のウンソンとも密かに会うしかなく、イ・ガンペもチャン・スタも映画の中だけで輝けるのである。
しかしそのような映画の‘甘美さ’に囚われると足をすくわれる時がある。イ・ガンペはペク会長を裏切ったパク社長を暗殺しようと目論むが、何故か土壇場になってパク社長の命を助けてしまう。よく映画の中に出てくる‘ヒーロー’を気取ってしまうのであるが、現実はそれほど甘くはない。それはやがてチャン・スタがウンソンの望み通りに、一緒にパフェとアイスキャラメルマキアートをカフェのテラスという公衆の面前で食する‘甘美さ’とは対照的であるのだが、そもそも2人が生きている現実のジャンルが違うのである。
だからラストシーンのイ・ガンペのパク社長の撲殺は、映画とは比べものにならない現実の悲惨さを表現したというよりも、寧ろイ・ガンペがヤクザ映画の究極の‘甘美さ’に囚われたと見倣すべきだと思う。
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