原題:『Dallas Buyers Club』
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
脚本:クレイグ・ボーテン/メリッサ・ウォーラック
撮影:イヴ・ベランジェ
出演:マシュー・マコノヒー/ジェニファー・ガーナー/ジャレッド・レト/スティーヴ・ザーン
2013年/アメリカ
「ロデオ」で勘違いを修正する方法について
アメリカのテキサス州ダラスに住む主人公のロデオカウボーイのロン・ウッドルーフがエイズを患うことから始まるドラマは、まるで勘違いを修正していくロードムービーの様相を呈する。1985年7月頃の物語は、まだエイズに関して正確な知識がなく、エイズに罹患したロンが仲間から除け者にされることは仕方がないが、マッチョが売りのようなロンは、入院先で同室になったレイヨンがゲイであるということだけで嫌うのみならず、女性であるというだけでやがて協力者となる医師のイヴ・サックスよりも、敵になるセヴァード医師を信頼していたほどである。
図書館で猛勉強の末に未認可医薬品である「ジドブジン(AZT)」が臨床試験段階にあることを突き止めたロンは、看護師を買収してAZTを秘密裏に入手し、とりあえず30日と言われた余命を生き延びるのであるが、体調が万全になることはない。AZTが入手できなくなり、看護師のアドバイスで訪れたメキシコで投薬された「抗レトロウイルス薬(ddC)」や「ペプチドT」で3カ月後に劇的に体調が改善し、その存在を知るのであるが、これもアメリカでは認可されておらず、密輸したことをきっかけにロンがクスリを売り、レイヨンがHIV陽性の仲間たちを患者として集めることで「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立し、さらに新薬探しに世界中を飛び回ると同時に、AZTの重篤な副作用を問題視するのであるが、それはやがて薬品会社と食品医薬品局(FDA)と対立する要因になる。
ロンがレイヨンが壁に貼っているイギリスのバンド「T・レックス」のヴォーカリストのマーク・ボランの写真を見て、イギリスのバンド「カルチャー・クラブ」のヴォーカリストのボーイ・ジョージと言うのであるが、どう見てもボーイ・ジョージとマーク・ボランを見間違えることはないと思う。しかしテキサスのマッチョ男としてその分野に無知であるということならば納得もいく。同様にレイヨンが異性愛者のマーク・ボランをゲイの「ディーバ」として崇めていた理由もマーク・ボランが「グラム・ロック」の先駆者であり、同時に地理的な要因からくる勘違いなのであろう。
日本の描写に関する「勘違い」が指摘されているが、意外と早く終わるエンドロールからも分かるように、本作は低予算で製作されており、いまだに多くのハリウッド大作が日本の描写を間違えているのだから多少は大目に見てもいいと思う。寧ろ、作品の冒頭で仲間がロデオをしている様子を見ながら3Pをしているロンが、最後に自らロデオをする(=行動する)ことで、あらゆる勘違いを修正していく過程を評価するべきであろう。