原題:『あいつは、いつも寝てる。』
監督:樽井隆広
脚本:樽井隆広
撮影:三澤駿人/ネイ・マンローエルビス
出演:岡田菜見/魚住昇矢/小縄優羅/水俣俊博/田中和弘
2017年/日本
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018)
「マスク」の行方について
物語の始まりは「共謀罪」が成立した2017年6月15日の翌日である。主人公で女子高生の花田真喜子はクラスメイトでいつも寝ている乾という男子が気になり、後を付けると乾が人気のない工場で電磁パルス発生装置を作っていた。同じ高機能マスクをつけて暫く観察していた後に、真喜子は一人で帰途につき、マスクをつけていることを忘れて歩いていることに気がついたのだが、通りすがりの人たちに見られてしまう。
家に帰ると帰りが遅いと父親に叱られるのであるが、マスクをどのように処分していいのか分からず、適当にゴミ箱に捨ててしまう。
翌日、少し遅れて教室に着くと、乾は寝ることなく授業を聞いていたのだが、暫く真喜子が映された後に、カメラがパンするとやはり乾は寝ていたのである。
ところで電磁パルス発生装置を作っている乾に共謀罪が適用されるなら、授業中に寝ている乾を起こしていた、あるいは乾と同じマスクをしていた真喜子にも、あるいはマスクを所持していた真喜子の父親にも適用されるのだろうか。内容のシリアスさとタイトルの軽さのアンバランスも素晴らしい短編の見本のような作品である。