原題:『Distancias Cortas』 英題:『Walking Distance』
監督:アレハンドロ・グスマン・アルバレス
脚本:イツェル・ララ
撮影:ディアナ・ガライ・ビニャス
出演:ルカ・オルテガ/マウリシオ・イサク/ホエル・フィゲロア/マルタ・クラウディア・モレノ
2015年/メキシコ
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016 最優秀作品賞)
「オタク」の限界について
主人公のフェディリコ・サンチェスは200キロを超える肥満体質のためになかなか外に出かけることもままならず、自宅に引きこもった生活を送っており、定期的に妹のロサウラと夫のラモンが訪ねてきて身の回りの世話をしてくれていた。
ある時、ラモンが旅先で撮った写真をフェディリコに見せてくれて2人は盛り上がったのであるが、ロサウラは全く興味を示さない。その後、昔撮った写真を探しているうちにフェディリコは未現像のフィルムを見つけ、どうしても見たいという一心でカメラ店まで出かける。たまたま店番をしていた店長の息子のパウロの計らいで安い値段で現像してもらい、さらに写真を撮りたくなったフェディリコはデジカメを売ってもらい、旅行に行く決心をする。
しかし訪れた旅行会社ではフェディリコを見た担当の女性からツアーは全て予約が埋まっているという理由で断られてしまう。帰りがけにフェディリコは心臓発作で倒れて救急車で運ばれてしまうが、その直前に撮っていた少年たちの写真を見たラモンとパウロが感動して、ロサウラの反対を押し切って3人で車で旅行することになるのである。
パウロが『Death Note』ならぬ『Death List』というマンガを読んでいたり、フェディリコが書いた「デス・リスト」の上位には亡くなった母親の担当医や昔の勤め先の女性の名前などがあり、全体的に女っ気がないところなど本作は「オタク」の物語と言っていいと思う。だから最後まで女性と良い関係が築けないまま終わった点は、結局、閉じこもった殻から抜け出せないおたくの限界を感じるのである。
それにしてもパウロがフェディリコに貸したカメラがニコンF3で『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(三木康一郎監督 2016年)や『夏美のホタル』(廣木隆一監督 2016年)でもニコンが使われていたから世界的な流行なんだと納得した。
なんと本作が最優秀作品賞を獲ったらしい。それならば『見栄を張る』(藤村明世監督 2016年)の方が断然クオリティーが高いことは既に書いた通りなのだが、日本映画が最優秀作品賞の対象外ならばせめて『幸せを追いかけて』(イングヴィル・スヴェー・フリッケ監督 2015年)の方だと思う。