映画 鈴木先生
2012年/日本
‘真面目’を排除する教育
総合 80点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
緋桜山中学の国語教師である鈴木章は、妊娠している麻美と新婚生活を送っているが、受け持つクラスの生徒である小川蘇美が気になって仕方がないというナンパだった描写は、生徒会選挙が描かれる辺りから一気に‘政治色’が強くなる。
生徒会選挙が記名投票に変更されたことにより、全員が選挙に参加することが義務付けられたことに抗議する意味で出水正が急遽会長に立候補し、立会い演説会において、中学生時代に生徒会の会長に自分たちが会長として相応しい友人が選ばれず、人気子役をしていた生徒が選ばれたことで選挙がただの人気投票に落ちぶれたことを明かすシーンは選挙のパラドックスを突いて皮肉の効いたものだと思う。
しかし鈴木先生のクールさは学校の演劇指導をしていることからも分かるように、自身の教師という立場さえも演技として捉えており、それは小川蘇美が卒業生の勝野ユウジに屋上に連れて行かれ、暴行されそうになる時でも、向かい側の校舎の屋上からジャンプして飛び越えて逃げることを小川に要求し、本作を観ている観客にも物語に本気でのめり込まないようにさせるくらいに徹底したもので、あくまでも勝野ユウジの‘真面目さ’とは距離を置く。だからパトカーに乗せられる前に鈴木が勝野に声をかけたことも、勝野はパトカーの中で泣いていたとしても、鈴木はあくまでもあるべき教師として演技をしただけなのだと思う。敵対する足子瞳先生のみならず‘真面目’な金八先生の時代は終わったのである。
鈴木先生の演劇指導は周到なもので、文化祭で披露する演目は武田泰淳の『ひかりごけ』である。カニバリズムを扱ったものであるが、例え極限状態に置かれたとしても‘演技’で乗り越えるという鈴木先生の並々ならぬ覚悟が伺える。
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