原題:『Three Billboards Outside Ebbing, Missouri』
監督:マーティン・マクドナー
脚本:マーティン・マクドナー
撮影:ベン・デイヴィス
出演:フランシス・マクドーマンド/ウディ・ハレルソン/サム・ロックウェル
2017年/アメリカ
微妙なすれ違いの「可能性」について
主人公のミルドレッド・ヘイズは娘で高校生だったアンジェラ・ヘイズが殺害されて7カ月経っても犯人が捕まらないことに苛立って使われていない3枚の広告看板で地元の警察署長を名指しで訴えたことからストーリーが展開するのではあるが、そもそもアンジェラが殺された遠因を作ったのは母親であるミルドレッドとの売り言葉に買い言葉であった。
一見するならば同じテーマを扱っている『リバーズ・エッジ』(行定勲監督 2018年)との大きな違いは人間関係の微妙なすれ違いが必ずしも悪い方向へは進まないところである。例えば、ミルドレッドに批判されたビル・ウィロビー署長は末期の癌を患っていたのだが、最後まで捜査を諦めていなかったどころか、匿名でミルドレッドへ看板の維持費として5000ドル寄付していたし、部下のジェイソン・ディクソン巡査へ自殺する前に励ましの手紙を残していたことで自分に大火傷を負わせたミルドレッドを咎めることもなかった。あるいはレストランでミルドレッドに暴言を吐かれた小人症のジェームズが反論しなかったおかげでミルドレッドは自分の広告看板に火を放った元夫のチャーリーを責めずにすんだのである。
ただ気になる点としてチャーリーの再婚相手がまだ19歳の女の子だったり、ウィロビー署長の妻も意外と若く、多少のロリコン感があるとしても本作の評価に影響はないとは思う。