息子('91)
1991年/日本
2人の息子
総合 80点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
母親の一周忌に遅刻してきた上にアロハシャツにジーンズ姿だった次男の哲夫を見た時の父親の浅野昭男は自分で電話をして呼んでおきながら一瞥しただけだった。その絶望的ともいえる気持ちは察するに余りあるのであるが、戦友会に出席するために上京するついでに長男の忠司と玲子夫妻と2人の娘たちが住んでいるマンションと、哲夫が住んでいる狭いアパートを訪ねた後に、故郷の岩手県の降り積もる雪に深く覆われていた家に一人で戻った昭男は、子供たちが幼かった頃の家庭を夢見終わった後に何を思ったであろうか。タイトルをなぞらえるならば、昭男は2人の息子に対して完全な誤解をしていたことに気がついたに違いない。
妻の一周忌の時には、サラリーマンとして企業に就職して都心のマンションに住んで家族を養っている優秀な長男と、アルバイトで仕事をころころと変えて怠惰な生活をしている次男という固定観念を抱いていた昭男は、実際に長男夫婦宅に一泊してみると彼らは父親の心配をしているのではなくて世間体を気にしているだけで玲子の不平不満を聞かされ、他方、いつの間にか次男は定職に就いており、聾唖者の川島征子を妻にするという男気を見せ、嬉しさの余り昭男は「お富さん」を歌う。征子が聾唖者という設定は、今後玲子のように小言を言われることは絶対にないという皮肉となるだろう。
それにしても気になることは、上京する昭男を娘の浅野とし子が赤いクルマに乗せて駅まで送る際に、カメラの前を横切る宅配便のクルマや、二戸駅において改札口を抜けてホームに入る昭男ととし子の間にいる駅員や、征子が帰る際に、哲夫が会話をしながら歩いていると2人の間を横切る通りかかりの男などの‘余計’な演出である。リアリズムという意味なのだろうか?
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