原題:『Elser』 英題:『13 Minutes』
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
脚本:レオニー=クレア・ブライナースドファー/フレート・ブライナースドファー
撮影:ユーディット・カウフマン
出演:クリスティアン・フリーデル/カタリーナ・シュットラー/ブルクハルト・クラウスナー
2015年/ドイツ
父親になり損ねた男の「父親殺し」について
主人公のゲオルク・エルザーのことを知りたいと思って本作を観たはずなのであるが、観終わってもエルザ―のことがよく分からないどころか、ますます謎に満ちた存在と化す。エルザ―は最初の妻のマティルダが妊娠するとスイスで中絶手術をさせようとするのであるが、マティルダはマンフレッドという男の子を産んでしまい、離婚しただけでなく養育費を払うはめになってしまう。しかし一方で、夫のいるエルザに子供ができた時には産むことに賛成して、産まれた男の子にゲオルクと名付けるのであるが、原因は分からないが不幸にも夭折してしまうのである。
メインテーマであるエルザ―のアドルフ・ヒトラー暗殺未遂事件に関しても謎のままで、いかなる団体にも所属しておらず、自白剤を打たれても単独犯であることを主張しているのであるから間違いないはずであるが、あれだけのダイナマイトをどのように一人で運んだのか不明な点も多い。ヒトラーがギリギリまでエルザ―を生かしておいた理由は、黒幕を突き止めるということだけではなく、たかが大工一人に暗殺されそうになったことを最後まで認めたくなかったのかもしれない。