原題:『ももドラ momo+dra』
監督:佐々木敦規
脚本:鈴木さちひろ
撮影:黒崎修一
出演:百田夏菜子/玉井詩織/佐々木彩夏/有安杏果/高城れに/うえむらちか
2011年/日本
アイドルの成長に伴い向上する主演作品のクオリティーについて
カプチーノを飲みながら「キスの練習をしているんじゃないんだから」という佐々木彩夏の、あるいはドッペルゲンガーという言葉を無理やり「ワインビネガー」と聞き間違える有安杏果の、そして百田夏菜子が買う前売り券の映画が「犬の惑星 創世記(ジェネシス)」というギャグは無論のこと、ストーリー自体も奥深い。
例えば、静岡県展に出品するために夏菜子をモデルに絵を描く高城れには、結局、入選しなかったものの、気になっていた戎川高校2年生の河本敦の入選作品を観に行き、そこに自分をモデルにした絵が描かれていたことに驚く。つまり親友をモデルに描いたのであるから、れには必死になって描いていたはずであるが、それでも入選が叶わなかったのであり、そのことを勘案するならば、入選している自分がモデルの絵を描いた敦の、れにに対する想いを想像した時にその感動は計り知れないものがある。
あるいは瀬尾聡に恋心を抱く夏菜子に対し、れにや詩織の言動は悪意はなかったはずだが決して好意的なものではなかったのであるが、夏菜子が気分を害した遠因は、ラジオで聞いたカール・ゴッチのエピソードによるものであろう。プロレスラーのカール・ゴッチは虫歯の治療の際に、「歯があるから虫歯になる」という逆説によって全ての歯を抜いて差し歯にしてしまったということを聞いた夏菜子は、自分も瀬尾聡が存在しないと考えれば恋に悩むことはないという理由で、映画の前売り券を詩織にあげてしまったが、すぐに号泣して後悔したのである。
本作は、今後のアイドル映画はこれくらいのレベルが必要だという雛形である。