原題:『さがす』
監督:片山慎三
脚本:片山慎三
撮影:池田直矢
出演:佐藤二朗/伊東蒼/清水尋也/森田望智/石井正太朗/松岡依都美/成嶋瞳子/品川徹
2021年/日本
球の無い卓球のラリーについて
主人公の原田智は卓球教室を経営していたのだが、一年前に妻の公子を難病で亡くしてから日雇いのアルバイトで生計を立てている。智には楓という中学三年生の一人娘がおり、仲は悪くないようだが、楓は反抗期といったところだろうか。
実は公子は筋萎縮性側索硬化症という難病を患っていたのだが、楽になりたいという理由から公子は安楽死を望むようになり、たまたま介護施設で出会った山内照巳という介護士が公子の安楽死を20万円で引き受けたのである。しかしこの時に経験で智は自殺ほう助に対して歪んだ考え方を抱くようになり、山内が手を下す自殺ほう助の手伝いをするようになる。
その後のストーリー展開は観て確かめて欲しいと思うのだが、ここではラストの智と楓の、自宅の卓球場での長回しの卓球のラリーに関して指摘しておきたい。確認しておきたいのは最初は二人はピンポン球を打っているのだが、途中からピンポン球が無いまま音だけは鳴ったままラリーが続くのである。これは『欲望(Blowup)』(ミケランジェロ・アントニオーニ監督 1967年)のラストシーンにおけるテニスボールの無いテニスのラリーを想起させる。つまり智と楓の関係が見た目は親子のままでも空虚な関係になってしまているという暗示なのである。SNS上のレビューで意外とピンポン球が無いままラリーしていることに気が付いていない人が多いことに驚かされる。
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