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「認知症介護びっくり日記」高口光子

2015年11月10日 23時19分02秒 | 読書(介護/終活)


「認知症介護びっくり日記」高口光子

著者は、その道の有名人、介護のカリスマ。
私も以前、TVで話しているのを聞いて感銘を受けた。
もともと理学療法士だったが、介護職へ転身。
話される内容は、臨床心理士か哲学者、である。
介護を極めると、人生も深まるのか!

P22
介護職員のおっぱいをさわるジイさんの話。
このジイさん、右のおっぱいばかり掴もうとする。
「本当に、あのおジイさんおかしいよね。私もこの前やられたんだけど、いつも右のオッパイばっかりなんだよね。なんで右ばっかりなんだろう。だから私、この間、『左のオッパイはどうしてくれるのよ』って言っちゃった」
さすがベテラン介護職員だ、レスポンスが違う。

夜間、トイレ誘導に成功したバアちゃんの話。
ずっとおむつをしていたけど、おむつ外しに挑戦したのだ。
P81
「ちょっと見てみい」
「なに?おバアちゃん」
 バアちゃんはポータブルトイレを指します。ポータブルトイレのバケツの中には、とぐろを巻いたウンコがありました。
(中略)
「いやあ、たいしたもんだ。久しぶりだね、こんな大きなウンコ見たの。すっきりするねえ。あんたも、このバアちゃんのウンコを見て嬉しいかね」
「はい、嬉しいです」
「人はね、あんまり他人のウンコなんか、見たくないんだよね。あんた、施設長のウンコみたい?」
「いいえ、嫌ですよ」
 その人のウンコを見て嬉しいということは、その人が生きていてくれて嬉しいということです。

P97
現場には言葉が必要です。自分たちはどこにいるのか、どこに向かおうとしているのかということを短いセンテンスで表現しなければならない場面があります。

P111
 認知症のお年寄りは、あるはずのない物を探すことがあります。
 年をとると連れ合いを亡くしたり、仕事を失ったり、貯金が減っていく。今まで人生を通じて培ったものが、一つひとつ失われていき、それが漠然とした不安を招きます。ない物探しの背景には、そんな喪失感や不安感が潜んでいるのです。

P112
 ここで大事なのは、おジイさんやおバアさんに、失ったものがあるかもしれないけれど、本当に大切なものは何も失われていないのだと伝えることです。年をとるということは、多くのものを得て、そして失うということでもあります。あなたはいまも生きているし、あなたのことを大切に思っている人がここにいる。そのいちばん大切なことは何も失われていないということを、探し物を一緒に探すという行為を通して伝えます。

P182に名物バアちゃん・ケサノさんの話が語られる。
このバアちゃん、踊りが大好き、踊るバアちゃん、である。

お風呂に入ろうと脱衣場に来ても、踊るのに忙しくて服を脱ごうとしない。トイレでもしっかり座って、ふんばらなきゃいけないのに踊っている。
 そのたびに職員が「踊らないで、お願いだから踊らないでよ」と頼んでも、いっこうに踊りをやめようとしない。とにかく施設ではけっこう手のかかるバアちゃんでした。

あるとき、介護職員が、「私ね、思いっきり踊らせてあげたい」、と。
熊本県天草諸島南部の牛深のハイヤ祭りで、ハイヤ踊りが3日間にわたって踊り続けらるという。
それだったら「思い切って鹿児島に行ってみたらどかな」
「何で鹿児島なの?」
「ケサノさんのふる里は鹿児島なんだよ」

こうして、ケサノさんのふる里訪問計画が動き出す。
この帰郷シーンは感動、である。
親戚や近所の人たちが集まって宴会になる。
すると、バアちゃんが例によって踊り出す。
「ケサノババア、その踊り、覚えちょったかな」
そして、皆がいっせいに踊り出す!

この踊りにはなんと、歌があったのです。お米が苗として植えられ、稲穂となって刈り取られる。そんなお米の一生を歌った歌にあわせて秋祭りに踊るのですが、この地域では永吉家のひとしか踊ることができない大切な踊りでした。

【参考リンク】
こんにちは。高口光子です。 | 講談社 - おとなスタイル

eかいごナビ | 高口 光子特集ページ

【ネット上の紹介】
カリスマ介護アドバイザーのホンネ全開。教科書には書かれていない認知症介護の基本のき。
認知症介護が断然ラクになるとっておき話! そもそも認知症について、あなたはどれだけ分かっているのですか? 認知症介護は本当に大変?“介護界のしゃべるカリスマ”による現場からの貴重なメッセージ!
【目次】
1 未知との遭遇―疾風編(「うちに帰ろうよ、ジイちゃん」
「こんなのラーメンじゃない」 ほか)
2 七転び八起き―ルーキー編(「私、お給料いりません」
「生きていて何があるんや?」 ほか)
3 家族の葛藤―解決編(「しょうがない」で結論に至る家族会議
「問題行動」には理由がある ほか)
4 介護の質―抱腹編(今日は避難訓練の日?
保健所も真っ青、鳥のエサ介助 ほか)
5 故郷に錦を飾る―感動編(すべての罪を引き受けてくれたバアちゃん
家来を連れてお国入り? ほか)
【著者紹介】
横浜市生まれ。九州の玄関、門司港で育つ。1982年、高知医療学院を卒業後、理学療法士としてスタート。福岡の老人病院に勤めたが、お年寄りの現実に愕然とする。1995年、ヘッドハンティングされて「特養ホーム・シルバー日吉」へ。理学療法士から介護職への転身が話題となる。いま本人が本音を書き込む介護ブログが人気。『不幸くらべ』で「第1回生き生き大賞」受賞。1998年ケアマネジャー、2000年介護福祉士資格取得。現在、介護老人保健施設「鶴舞乃城」看・介護部長。介護アドバイザーとして全国で講演活動も続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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