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「謝るなら、いつでもおいで」川名壮志

2015年07月18日 14時07分20秒 | 読書(犯罪)


「謝るなら、いつでもおいで」川名壮志

約10年前、2004年6月に起きた殺人事件。
その衝撃は忘れられない。
小学校6年の女の子がクラスメートの女の子にカッターで切られて死亡。
いわゆる「佐世保小6女児同級生殺害事件」を扱っている。

被害者の父は、毎日新聞記者。
著者はその部下。
事件当日をつぶさに見ており、その後の調査――関係者への聞き取りを交え、本書を著した。

なぜ小学校6年の女の子がこのような凶行に及んだのか?
結果からいうと、分からない。

少年犯罪の変遷
P193
社会全体が貧しかった戦後の動乱期、少年犯罪の原因は無秩序な社会そのものにあると考えられていた。ひもじくて荒れた世相が子どもたちを犯罪に駆り立てる。それが通念だった。実際、少年の殺人事件は、この時期がピークだった。
 やがて経済が復興し、一億総中流化が進む。すると今度は、少年犯罪の火種を、社会ではなく、個々の家庭や教育現場にはめ込む考え方がトレンドとなった。ドラマ「3年B組金八先生」で描かれたような時代性である。
 そして90年代。酒鬼薔薇聖斗事件や西鉄バスジャック事件など、家庭や学校の枠組みだけでは説明のつかないような、突発的で不可解な少年事件が発生。
(中略)
そうした社会の要請にこたえるようにして登場したのが、少年の発達や成長に視点を向けた、精神鑑定だ。
 精神鑑定はもともと、容疑者に刑事責任能力があるかどうかを判断するためのものだった。しかし、最近の少年事件においては、こういった不可解な事件の原因と、その子固有の特性とを結わえ付ける仕掛けとして、導入が進んだのである。
(こうして、「発達障害」が脚光を浴びるようになった)

このタイトルの元になっている発言は、被害者の父、ではない。
被害者の兄、である。

P317
こちらも、今までのことを断ち切って前に進みたいという思いがある。諦めじゃなくて、結果として僕が前に進めるから、1回謝ってほしい。謝るならいつでもおいで、って。それだけ
(さらっと言っておられるが、この兄もそうとうひきずり、苦しんでいる)

PS
読んでいて、ずっと暗く、つらい気分が続いた。
さらに、めずらしく体調もくずし、しんどかった。
とことん気の滅入る作品である。
単に「サイコパス」による事件、と片付けられたら、どれほど楽だろう?
この手の本を読むのは、しばらく止め。

【ネット上の紹介】
友だちを殺めたのは、11歳の少女。被害者の父親は、新聞社の支局長。僕は、駆け出し記者だった―。世間を震撼させた「佐世保小6同級生殺害事件」から10年。―新聞には書けなかった実話。第十一回開高健ノンフィクション賞最終候補作を大幅に加筆修正。
[目次]第1部(1本の電話
僕は新聞記者
昼日中の教室で
抱き上げてやれなかった
加害少女は ほか)
第2部(御手洗さん/被害者の父として
加害者の父として
被害者の兄として)

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