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「流」東山彰良

2015年06月01日 22時16分55秒 | 読書(小説/日本)


「流」東山彰良

面白かった。
怒濤のようにストーリーと感情が押し寄せてくる。
タイトルどおり、読者は押し流される。
すごい作品である。

物語は台湾から始まる。
1975年、蒋介石総統が亡くなる。
その同じ年、祖父が殺される。
誰が殺したのか?
・・・とくると、ミステリ小説と思われるかもしれない。
そうではない。
家族、青春、恋愛、政治、歴史、風俗、戦争・・・様々な要素を絡ませながら、
台湾、日本、中国にまたがって展開していく。

P156
「霧社事件のことは?」
「はい、知っています」
 1930年台湾先住民が日本の統治に対して武装蜂起した事件だ。手はじめに派出所が襲われ、約140人の日本人が殺害された。総督府はただちに軍隊と警察を投入して、徹底的に武力弾圧した。暴動を鎮圧したあとも日本人は報復をつづけ、約千人の台湾人が殺された。

【蛇足】
もし、これに似た作品を挙げるなら、梁石日さんの「血と骨」、奥田英朗さんの「サウスバウンド」か?
もっとも、そんな仕分け作業は意味ない。
「流」は「龍」であり、中国人の支流、共産党とは異なる道を選んだ国民党の流れを描いている。

【さらに蛇足】
P223
わたしは拳銃をジーンズのまえに差して、Tシャツで隠した。
・・・このシーンだけど、発砲したばかりの銃口は高熱を発している。
ジーンズのまえに差して火傷しないのだろうか?
ちょっと、気になった。
一発くらいなら大して熱くならないのだろうか?
実際のところどうなんだろう?(重箱の隅をつついて申し訳ない)

【ネット上の紹介】
春は、謎と輝きに満ちている―― 台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能を持つ「このミス!」出身、大藪賞受賞の異才が、はじめて己の血を解き放つ! 何者でもなかった。ゆえに自由だった――。1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。謎と輝きに満ちた青春が迸る。友情と恋、流浪と決断、歴史、人生、そして命の物語。エンタメのすべてが詰まった、最強の書き下ろし長編小説! 

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