【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「女たちのシベリア抑留」小柳ちひろ

2020年06月28日 07時21分16秒 | 読書(戦争/引き揚げ/ 抑留)
「女たちのシベリア抑留」小柳ちひろ

従軍看護婦たちも、シベリアに抑留されていた。
それを掘り起こしたノンフィクション。
ことしのベスト、と思う。

P44
お下げにして編んでいた髪を二房、襟足近くで切り、母に渡した。
「これ、私の代わりに・・・・・・。遺骨は帰ってこないと思うから」

軍司令部からの通達
P59
「ソ連軍からの要求するものは、抵抗せずに渡すこと、その第一は酒、第二は女」

P61
虎林陸軍病院の陸軍看護婦長、佐藤節子は、ソ連軍が女を求めてやって来るたびに、庶務主任の下士官から「若い子を出せ」と命令され、床下に看護婦たちを隠して徹底的に抵抗した。ようやくソ連兵が立ち去ると、「婦長だけ残れ」と呼び出され、「俺たち軍人は命より大事な軍刀を手放した、女の貞操くらい何だ」と往復ビンタを加えられたという。
杏樹陸軍病院でも、日赤看護婦、永安春子の回想によれば、病院長が看護婦たちに「軍人が軍刀を捨てたのだから、女が貞操を捨てるくらい何でもないことだ。ソ連兵に求められたら貞操を提供しろ」と命じた。永安は「何とひどい言葉か」と悔しくて腹が立ったが、上官には反発できない。その時、婦長の三福君子が「軍が滅びて軍刀を捨てるのは当然です。私たちは大和撫子です。操は生きている限り守らねばなりません」と発言し、仲間の看護婦たちは感激した。後に三福本人から話を聞いた十川八重子によれば、三福の発言はもっと辛辣で、「『貞操を提供しろ』と言うのであれば、あなたの奥さんから先に出すべきでしょう」と言い、ようやく病院長は引き下がったのだという。(普段いばっている院長や軍人たちが、負けるとふがいない態度になるってどういうこと? すかさず保身に走るってのは、GHQが来たときにも見られた・・・つまりRAA)

同じ収容所にいた男性たちが驚いたこと
P229
「ダモイ(帰国)の日に看護婦たちが化粧をしていたんですよ。あれだけ何度も所持品検査で全部取り上げられて何も持っていないはずなのにね、口紅もつけ、白粉も顔にはたいてるんです。(後略)」

【挿入短歌】
髪断って女を隠す敗戦日 (阪東秀子)
野も山も実りの九月十九日 北斗七星ソ領で眺む (阪東秀子)
シベリアの秋の夜空にある星よ 命ある身を恨んでもみき (林正カツエ)
姉となり妹となりてシベリアに 勇士のみとり我はひたむく (竹折由美子)

【参考リンク】
「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」辺見じゅん
https://blog.goo.ne.jp/takimoto_2010/e/b377f89dbef9914b47f13a0ea34f8352

「生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後」小熊英二

「凍りの掌(て) シベリア抑留記」おざわゆき

【感想】
組織としての日本赤十字に信頼を持てなくなった。

【ネット上の紹介】
NHK BS1スペシャルの話題作を書籍化。文化庁芸術祭賞優秀賞他、数々の賞を受賞!70年の沈黙を破り、彼女たちは証言した。知られざるシベリア抑留、もう一つの歴史。
第1章 シベリアに女性がいた
第2章 従軍看護婦たちの満州
第3章 シベリアへ
第4章 なぜシベリアに送られたのか
第5章 長引く抑留
第6章 “女囚”
第7章 帰国
第8章 帰らざるアーニャ