「涙と花札 韓流と日流のあいだで」金惠京
評判の作品を読んだ。よかった。
タイトルの「涙と花札」は、韓国の葬儀のシーンから来ている。
そこでは涙の数が死別の悲しみの深さを表し、参列者も遺族とその悲しさを分かち合う。
(中略)参列者を前にしなければ、遺族も声をあげて泣くことは余り無い。そして家族を亡くした悲しみの強さはどれ程のものか周囲もよく理解しているので、参列者は彼らの気持ちを和まそうと努力する。
そこで行われるのが、葬儀場(韓国では遺族がそこに泊まり込む)での参列者の間の花札である。
韓国では、葬儀場や病院の売店には必ず花札が置いてあるそうだ。
その花札は、1世紀以上前、李氏朝鮮時代後期に日本から入ってきたそうだ。
このように、日本と韓国の相違と相似が書かれている。
自伝の形をとり、体験とエピソードが紹介されている。
読んでいて、著者の人柄の良さが感じられ、好感度が高い。
世の中、金惠京さんのような方ばかりだったら、日韓関係もうまくいくんだけど。
[目次]
第1章 遠い日の記憶;
第2章 夢と受験のはざまで;
第3章 憧れの留学生活;
第4章 大学での忘れえぬ人々;
第5章 望郷;
第6章 道を切り拓く;
第7章 北朝鮮という運命;
第8章 アメリカを生きる韓国人;
第9章 終の帰還
【ネット上の紹介】
韓国人が分かる、日本人が見えてくる――新世代の韓国人法学者による注目の書! なぜ韓国人は葬儀場で号泣した後、賑やかに日本由来の花札に興じるのか? なぜ受験競争が世界一と言われるほど過熱するのか? 韓国人にとって北朝鮮とは何か? 五輪に沸くソウルで育ち、日本に憧れて明大と早大で学究生活を送った気鋭の女性法学者が、自らの体験をもとにユニークな視点で日韓の相違と相似を描いた好著!