「怖いへんないきものの絵」中野京子/早川いくを
フランス語では、黄昏時のことを、『犬とオオカミの間』と呼ぶ
P41
「向こうから来るのが、無害な犬なのか、恐ろしいオオカミなのか見定めにくい暗さ、という意味です。恐怖をはらんだ表現なんです。
『ペスト・オオカミ・オスマントルコ』という言葉もあり、これは『地震・雷・火事・親父』のヨーロッパ版。日本では恐ろしい獣といえばヒグマですが、ヨーロッパでは何といってもオオカミだったのでしょうね」
ペローについて
P42
「主人公の少女に赤い頭巾をかぶせて『赤ずきんちゃん』と名づけたのは彼だといわれています。ちなみに、シンデレラにガラスの靴をはかせたのもペローです」
P45
「赤ずきんちゃんの話はとてもエロティックです。このお話の核が、『貞操の危機』にあることを、読者は無意識のうちに感じているはずで、それをギュスターヴ・ドレはうまく視覚化しましたね」

P59
「(前略)ローマ帝国がキリスト教を国教と定めると、それまでギリシャやローマにいた地元の神々は駆逐されたり、格下げされてゆきます。オオカミは、ローマ神話に登場する軍神マルスの聖獣だったため、次第に貶められ、やがて害獣になり果てました」(これはイギリスにおけるケルトの妖精でも起きた)
【ネット上の紹介】
『怖い絵』と『へんないきもの』が、まさかの合体。アルチンボルドの魚、クラナッハのミツバチ、ルーベンスの狼、ペルッツィのカニ…。不気味で可笑しい名画の謎に迫る!
全裸でサメに襲われる理由―『ワトソンと鮫』コプリー
魚介類にも神の御心を―『魚に説教する聖アントニウス』ベックリン
オオカミはなぜ「ワル」なのか―『赤ずきんちゃん』ドレ
ローマを建国したオオカミ少年―『ロムルスとレムス』ルーベンス
怪物を切ったのは誰だ―『ペルセウスとアンドロメダ』メングス
強敵に、男一匹立ち向かえ―『ヘラクレスとルレネーのヒドラと蟹』ペルッツィ
挟まれ、噛まれる少年たち―『カニに指を挟まれる少年』パオリーニ
ミツバチで人類は滅ぶのか?―『ヴィーナスとクピド』クラナッハ
ハエで人類は復活できるのか?―『聖母子』クリヴェッリ
偉大なる母の宙返り―『コショウソウとピパ』メーリアン
生物多様性を絵にしてみたら―『水』アルチンボルド
罪と、汚れと、愛らしさと―『美術鑑定家としての猿たち』マックス
進化と神罰の符号『人間の堕落』グース