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【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「その子の「普通」は普通じゃない 貧困の連鎖を断ち切るために」富井真紀

2019年07月07日 19時14分48秒 | 読書(風俗/社会/貧困)
「その子の「普通」は普通じゃない 貧困の連鎖を断ち切るために」富井真紀
 
宮崎県で「子ども食堂」などの支援活動をしている著者による
子ども貧困問題をテーマにした作品。
自伝が大半を占めるが、実態が非常にリアルに再現される。
父はギャンブル依存症、母は著者を産んだ半年後に失踪。
 
 
中学卒業後、家出をして東京へ行く、年齢を偽って夜の仕事をするが、
そのスナックに警察の手入れが入る
P85
「万事休すだ、宮崎に送り返される!ばあちゃんは泣くだろうな、お父さんは怒りまくるだろうな。でも、これも自業自得だ」。
あきらめた瞬間、ママが私の頭を思いっきり押さえつけて、カウンターの下にもぐらせた。そして耳元で、「裏口から走って逃げな!二度と戻って来るんじゃないよ!元気で生きなよ!」と、囁いた。
 
保険証が失効した場合の対処
P146
今なら「無料低額診療」という制度があります。生活保護受給者であるとか低所得者であるなどの経済的理由や、DVの被害者で住民票を移したなどの事由から、健康保険証をもっておらず、病院にかかれない人がいます。そういう人を対象に、無料もしくは定額で、診療を受けられるようにする制度です。
 
ギャンブル依存症の父との縁を切るための努力
P159
私という身内がいるのにもかかわらず、父を生活保護受給者にする。それでも父のケースは不正受給に相当しないことを知り、安心したのです。
この時から父は私の家を出て、生活困窮者を支援する団体に紹介された住居でひとり暮らしをすることになりました。
 
姉とも縁が切れる
P162
姉の人生は姉のもの、私の人生は私のもの。
苦しかろうと楽しかろうと、それぞれの人生。
そう考えることにしました。姉の存在が私に苦痛をもたらすものなら、離れて行ってもかまわない。もう探さない、もう意識しない、それでいいと思っています。
今でも姉の消息は不明なままです。生きているのか死んでいるのかさえわかりません。
 
【感想】
産みの母と一度だけ会うシーンがある。
しかし、感動の再会と思ったら、娘に金の無心をする。
著者はこれにより、母と縁を切る・・・そのシーンも印象深い。
読んでいて、格差とはこういうことか、と。
負の連鎖を断ち切るためのヒントがある。
読んでみて。
 
【ネット上の紹介】
自らも壮絶な半生を乗り越え、児童虐待防止の活動や、「子ども食堂」など生活困窮者への取り組みがメディアでも大きな反響を呼んでいる著者の、「負の連鎖を断ち切るため」のリアルな提言。子どもの7人に1人が貧困というこの国で私たちにできることが、きっとあります。
目次
その子の「普通」は普通じゃない
親の人生に巻き込まれる子どもたち
食べるためにたどりがちな道
気がつけば虐待する親に
その日暮らしの金銭感覚
「普通の家庭」がわからない

「性風俗のいびつな現場」坂爪真吾

2016年06月07日 21時01分34秒 | 読書(風俗/社会/貧困)


「性風俗のいびつな現場」坂爪真吾

著者は、上野千鶴子さんの弟子にあたる。
風俗を貧困や社会問題として考え、セーフティネットの機能も論じた作品。

鶯谷デッドボールについて
P111
他の風俗店では不採用になるような地雷女性=「デブ・ブス・ババア」を集めたレベルの低さ日本一の「地雷専門店」として、業界では有名な存在だ。(これで儲かるのだろうか?HPの求人コーナーを読むと「資格習得支援制度」まであり、次のように書かれている→「風俗卒業後もちゃんと考えたい!」「お仕事しながら資格・検定をGET♪」

P124
売れている女性は自分に投資できる。そしてどんどん売れるようになる。売れていない女性は自分に投資できない。そしてどんどん病んでいく。

P155
 取材に伺った「おかあさん」池袋店の在籍女性は92名で、平均年齢は52歳。現在の客層は、新規1割、指名3割、不特定多数の女性を指名するリピーターが6割だそうだ。
 利用料金は60分1万円から。そのうち女性のバック(取り分)は5500円だ。(HPを見ると、確かに50代から60代の女性が多数登録されている…需要がある、って事なんでしょうね。さらに、求人コーナーを読むと、「生活相談会・風テラス」も実施されている(至れり尽くせりだ)→「風テラス」では、当グループで働く女性が、現在抱えている悩み(借金、離婚、障害、病気、介護、育児、DVなど)を、風俗で働いているという事実を隠さずに弁護士と社会福祉士に相談をすることができます。もし自分ではどうしようもできない悩みがありましたら、スタッフを始め「風テラス」でも全力でご相談に応じます)

P164
熟女好きの男性には、きれいな女性より大柄な女性が好きな人がいる。子どもの時は母が大きく見える。胸やお尻の大きい大柄な女性に抱かれることで、縮尺的に子どもに戻れるのだという。

【とりとめのない独白】
風俗料金は、ピンキリであるが、およそ14000円。
本が10冊買えることになる。

石川啄木は、買春が止められなかった、妻がいるにもかかわらず。(あの「ローマ字日記」に書かれている)
シューベルトは、梅毒で亡くなっている。(誰から感染したのか学会では研究が進んでいる)
人格とナニの相関関係はどの程度あるのか? 
ポテンシャルの問題?

【参考リンク】
鶯谷デッドボール訪問

【ネット上の紹介】
わずか数千円で遊べる激安店、妊婦や母乳を売りにする店、四〇から五〇代の熟女をそろえた店など、店舗型風俗が衰退して以降、風俗はより生々しく、過激な世界へとシフトしている。さらに参入するハードルが下がり、多くの女性が働けるようになった反面、大半の現場では、必ずしも高収入にはならない仕事になっているのが実態だ。それでは、これから風俗はどこへ向かっていくのだろうか。様々な現場での取材・分析を通して、表面的なルポルタージュを超えて、風俗に画期的な意味を見出した一冊。

[目次]
第1章 地方都市における、ある障害者のデリヘル起業体験記
第2章 妊婦・母乳専門店は「魔法の職場」
第3章 「風俗の墓場」激安店が成り立つカラクリ
第4章 「地雷専門店」という仮面
第5章 熟女の・熟女による・熟女のためのお店とは?
第6章 ドキュメント 待機部屋での生活相談
終章 つながる風俗


「最貧困女子」鈴木大介

2015年05月11日 21時19分49秒 | 読書(風俗/社会/貧困)


「最貧困女子」鈴木大介

2015年「新書大賞」5位。
「貧困」がテーマ。
気になっていたので読んでみた。

読んで驚く。
これが「福祉国家」日本の現状なのか?!、と。
「生かさぬよう、殺さぬよう」という言葉が思い浮かぶ。
「健康で文化的な生活」とほど遠い世界。
日本アンダーワールド、である。

貧困とは何か?・・・「三つの無縁」「三つの障害」から貧困に陥る
P10-11
三つの無縁とは、「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」
三つの障害とは、「精神障害・発達障害・知的障害」

P94
「最初の人は、値切られて5000円だった。出会い系って言っても、いろいろの人がいるよ。身の上とか子供のこと話したら黙って3万くれた人もいたし。変なクスリ飲まされて縛られて、寝ている間に中だしされたこともあるし、殴ったり蹴られたりしたことは数え切れないぐらいある。私、可愛くないからね」

P128
AVのモデルプロダクション社長に、こうした障害のあるAV嬢というのは結構な数がいるのかと聞いたところ、「いわゆる三大NGの現場(ハードSM、アナル、スカトロ)にいる。特にスカトロのAVに出ている女優の半数は知的障害だ」という回答があった。

PS
読んでいて気が滅入ってくる。
感情移入しすぎると鬱になりそうだ。

【参考リンク】
鈴木大介『最貧困女子』

【ネット上の紹介】
働く単身女性の3分の1が年収114万円未満。中でも10~20代女性を特に「貧困女子」と呼んでいる。しかし、さらに目も当てられないような地獄でもがき苦しむ女性たちがいる。それが、家族・地域・制度(社会保障制度)という三つの縁をなくし、セックスワーク(売春や性風俗)で日銭を稼ぐしかない「最貧困女子」だ。可視化されにくい彼女らの抱えた苦しみや痛みを、最底辺フィールドワーカーが活写、問題をえぐり出す!

[目次]
第1章 貧困女子とプア充女子(貧困女子=小島涼美さん(23歳)の場合
「わたしは犬以下」 ほか)
第2章 貧困女子と最貧困女子の違い(「最貧困女子」は、セックスワークの底にいる
清原加奈さん(29歳)の場合 ほか)
第3章 最貧困少女と売春ワーク(なぜ家出少女たちは売春の世界に吸収されていくのか
「非行少女」から始まる ほか)
第4章 最貧困少女の可視化(ふんわり系美女の副業
地方週一デリヘル嬢 ほか)
第5章 彼女らの求めるもの(加賀麻衣さん(21歳)の場合
母親がケツもちで売春の勧め ほか)


「さいごの色街飛田」井上理津子

2012年07月23日 21時55分38秒 | 読書(風俗/社会/貧困)

「さいごの色街飛田」井上理津子

2012年7月10日、朝日新聞・文化欄で井上理津子さんと本作品が大きく取りあげられていた。
12年にわたる取材で大手メディアが報じない社会の隙間を切り取った、と。

「飛田は、すごく雰囲気のある場所やで」、と聞いたことがある。
以前読んだ「血と骨」でも重要ポイント。
気になるテーマなので、読んでみた。

P94
飛田遊郭の営業形態は「居稼(てらし)」だった。
「居稼」は、妓楼に自分の部屋を与えられ、そこで客を取る形態のこと。芸者のように、置屋でスタンバイし、お呼びがかかって座敷に出向く形態「送り」に対して、こう呼ばれた。座敷には、往来に面して太い格子が巡らされ、本来、娼妓はその格子の中で、外向きに並ぶ。東京の「張り見世」と同じ、この形態のことも、大阪では「居稼」と呼んだ。客は外から覗き込んで、娼妓の品定めをする。娼妓がお客に顔を「照らす」を、当て字にしたもので、「稼ぐ」者が「居る」と書くとは、なんともストレートだ。

P106
滋賀県八日市市新地遊郭では、娼妓になる儀式として、女性を、死者の湯灌に見立てた「人間最後の別れ風呂」に入れ、その後、土間に蹴落とし、全裸で、麦飯に味噌汁をかけた「ネコメシ」を手を使わずに食べさせた。人間界から「畜生界」に入ると自覚させたのだという。「男根神」と書いて「おことさん」と呼ぶ木の棒を強制的に性器に入れる「入根の儀式」というのも行われたという。

P299
「この商売をして、よかったと思うことは一つもない」と、料亭経営者のマツノさんは言った。「現状満足度はゼロ%や」と、女の子を経ておばちゃんになったタエコさんも言った。それでも、みんな、生きていくために飛田にいる。

本書を読んで、飛田に行ってみたいと思う読者がいたとしたら、「おやめください」と申し上げたい。客として、お金を落としに行くならいい。そうでなく、物見にならば、行ってほしくない。そこで生きざるを得ない人たちが、ある意味、一所懸命に暮らしている町だから、邪魔をしてはいけない。

PS
私も、この本を読んで飛田に行ってみようかな、と思ったけど、上記の文章を読んで断念。

PS2
読む価値のある作品と思う。
一読をお勧めする。

【ネット上の紹介】
遊廓の名残りをとどめる、大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾をのみ込む貪欲で多面的なこの街に、人はなぜ引き寄せられるのか!取材拒否の街に挑んだ12年、衝撃のノンフィクション。
[目次]
第1章 飛田に行きましたか;
第2章 飛田を歩く;
第3章 飛田のはじまり;
第4章 住めば天国、出たら地獄―戦後の飛田;
第5章 飛田に生きる;第6章 飛田で働く人たち


「セックスボランティア」つづき

2010年04月14日 20時14分05秒 | 読書(風俗/社会/貧困)

先日、ノンフィクション「セックスボランティア」を紹介した。
その後気になって、ネット検索してみた。
キーワードは「障害者専門風俗」。
けっこう出てくる。
「高齢者」とセットになっている店が多い。
店のスタッフの「女の子」も介護経験があったり、ヘルパー資格を持っている。
プレイ中に失禁したり、脱糞の可能性があるかもしれない。
体調悪化して、救命措置が必要な場合もあるかもしれない。
自分で寝返りがうてない方もいるだろう。
様々な困難が予想される。
その為か、東京など、料金割高感がある。
大阪は比較的良心的。
名古屋は少し安めに感じた。
以下、料金体系の一例。(転載)

 
ビジター
メール会員
入会金
無 料
70分コース
22.000円
18.000円
90分コース
30.000円
24.000円
120分コース
40.000円
32.000円
180分コース
54.000円
43.000円
延長30分
10.000円
指名料
2.000円
 
ホテル代は別途

話は変わるけど、これと比べると、クライミングジム利用料金は安い。
1日中、開店から閉店まで、へろへろになって腹筋がつるまでいても2000円。
スタッフの方も、親切に教えてくれる。
お得感では、クライミングが圧倒的勝利。
習慣性、常習性の比較では・・・・どうだろう?
個々人本来のポテンシャルや気質でしょうね。
(このセリフ、「張り込み姫」からのパクリ!)

PS
ちなみに、一般のスポーツジムは、10,000円/月、くらい。
また、英会話学校に行ったとすると、
入会金30,000円、レッスン12,000円/60分、教材費数万円。
世の中お金・・・である。


「セックスボランティア」河合香織

2010年04月12日 12時40分30秒 | 読書(風俗/社会/貧困)

「セックスボランティア」河合香織(新潮文庫)

出版された当時、かなり評判になった。
(ずっと気になっていた作品)
障害者の性を扱っている。
私が学生時代(かなり昔だけど)、周りでは、『障害者』や『性』の問題をテーマに発表していた。
みんなまじめだなぁ、と感心した。
(ちなみに、私の卒論テーマは『マンガ』)
でも、真面目な周囲だが、さすがに『障害者の性』を扱おう、って方はいなかった。
誰も考えつきもしなかった、と思う。
当たり前に存在することなのに・・・それだけ禁忌だった、と思われる。
酸素ボンベを片時も手離せないのに、介護の方を伴い、なぜそこまでして風俗へ行くのか?
手足が動かない方の自慰を介助するのは、介護の範疇になるのか?
(それは純粋に『自慰』なのか、って話もあるが)

以下、P64転載。
食べることや排泄についてはみんな言い出せるけど、性に関しては何もいえない。
一生当然の権利を口に出すこともできずに死んじゃう人があまりに多い。
自分が生きていることだけでも迷惑だと思っている。
贅沢なのかなと思い込んでいる。
その人たちをどうしたらいいんでしょうか?


【ネット上の紹介】
「性」とは生きる根本―。それはたとえ障害者であっても同じことだ。
脳性麻痺の男性を風俗店に連れていく介助者がいる。
障害者専門のデリヘルで働く女の子がいる。
知的障害者にセックスを教える講師がいる。
時に無視され、時に大げさに美化されてきた性の介助について、その最前線で取材を重ねるうちに、見えてきたものとは―。
タブーに大胆に切り込んだ、衝撃のルポルタージュ。
序章 画面の向こう側;
第1章 命がけでセックスしている―酸素ボンベを外すとき;
第2章 十五分だけの恋人―「性の介助者」募集;
第3章 障害者専門風俗店―聴力を失った女子大生の選択;
第4章 王子様はホスト―女性障害者の性;
第5章 寝ているのは誰か―知的障害者をとりまく環境;
第6章 鳴り止まない電話―オランダ「SAR」の取り組み;
第7章 満たされぬ思い―市役所のセックス助成;
第8章 パートナーの夢―その先にあるもの;
終章 偏見と美談の間で