新専貨回想

平成の世を駈けたヤード系輸送の末裔

失われた鉄路への憧れ(その2)

2008-08-09 10:15:27 | 民鉄・3セク

 今度は日新興業のタキ75765、ただ1輌の「八森駅」常備車です。勿論JR五能線の駅で、路線も駅自体も現存しますが、今となっては、こんな駅に私有貨車が常備されていたこと自体ピンとこないでしょうね。常備場所の専用線自体、この写真を撮った15年前に廃止されており、現車標記と書類上残るだけの、実態の無い「置籍常備駅」となっていました。私有貨車の一覧表で、1輌だけ八森駅常備のタキ5750が存在することを発見し驚いた記憶があります。

 かつて八森には大日本鉱業の発盛鉱山があり、閉山後も長らく製錬所が稼動していたので、硫酸タンク車の出入りがありました。坑内用ナローTLを改軌した、電気機関車と呼ぶより電動屋台と呼ぶに相応しい様な奇怪なスタイルのロコが入換をしていたことで有名ですね。私も学童向け百科モノで(!)パワムに押されて?走るこいつの写真を見たときにはたまげました。とあるサイトによると、専用線の架線が低いため、ワラ1とか少しでも全高が高い貨車が入線すると、屋根が架線に接触してスパークを散らす(!!!)、とても先進国にあるまじき情景が展開されていたそうです。

 このゲテモノロコ、地元でも良く知られた存在で、専用線廃止後も近くの神社の境内で保存される予定だったそうです。それが直後に発生した日本海中部地震でこの地域は大きな被害を被り、保存話も水の泡となったのは余りに残念です…

 話題を戻しますが、タキ75765の現車は実際には長らく宮下の小名浜製錬に臨時常備され、晩年に小坂へ移り最期を迎えました。当時の小坂鉄道は、長らく同地で活躍してきた同和鉱業所有の汽車製タキ5750型の老朽化が著しく、それの代替に全国各地から少しでも状態の良い多数の5750型を集め運用していたので、苫小牧ケミカルや住商化学品など珍しい所有者のものも見られました。

 そういえばこれを撮影した小坂鉄道自体、硫酸輸送は3月で終了して休止状態です。小坂町、親会社DOWAホールディング共に今後活用したい意向はある様ですが、このまま「失われた鉄路」になっていくのでしょうか…広い構内を活かし、鉄道保存施設でも誘致できれば、とも思いますが、冬季は豪雪地帯なので丈夫な屋根必須な問題もありますね。

(撮影 1998年7月 小坂鉄道 小坂駅にて)


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