タイムマネジメント第2話は、「完ぺき主義の弊害」についてお話しました。コストと品質(クオリティー)と納期(デリバリー)は、お互いに背反する関係で、全てが良というわけにはいきません。期限が決められている仕事の場合、完ぺきさを求めるあまり、結果としてやっつけ仕事になってしまうケースが多々見られます。完ぺきさを追い求める必要がない場合は、走りながら問題点を解決した方が良い結果に結びつきます。
「やる気の方程式」は、リーダーシップ理論で確立されている話の1つです。藤原直哉さんの著書やインターネットラジオで時々取り上げられているので、聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。「やる気の方程式」とは、「やる気をあげる要素と、やる気を下げる要素は違う」という説明です。チームのモチベーションが下がっていると、チームが産み出すアウトプットやパフォーマンスが低下してしまいます。リーダーはチームを構成するメンバーの潜在能力を引き出し、チーム全体のパフォーマンスを高めることが、大切な仕事の1つです。
人間とは現金な生き物でして、エサを与えられていればワンワンと吠える犬と違って、何のために仕事をするのか、この仕事を通じて自分は成長しているのだろうか、この仕事は世の中のために貢献しているのだろうか。そんなことを考えています。昭和の時代でしたら、会社がクビになったら家族が路頭に迷ってしまうので、クビになりたくなかったら言うことを聞けといえたのですが、平成のいまでは、ワンワンと吠えている忠犬でもあっさりリストラされますし、首になったからといっても、捨てる神があれば拾う神もあるわけで、うちに来ないかと誘われることだってあります(人にもよりますがね)。
やる気が高い水準にもっていくにはどうしたら良いのでしょうか? まずは、やる気が上がる要素な何か? この仕事が終わったら皆で旅行に行こうとか、ボーナスをたくさん出すぞ。こんな業務経験が積めて今後役に立つなど、本人のやる気が出たら金銭的な報酬やご褒美がもらえる。こういうことを言うとやる気が上がります。でも、言わないから下がるかというとそうではありません。まあ、この会社だもん、そんなもんでしょう。といったところです。本人が努力すれば得られる目標というか飴です。
次にやる気が下がる要素は何か? チームにどうしても相性が合わない人がいるとか、お客様が苦手だとか、上司は私を評価してくれない、あいつの方が評価されている、職場の環境が仕事に適していない、チームの風通しがよくない、言いたいことも言えない、下手なことを言うとリスクを押し付けられる などなど、いろいろ聞いてみると、自分では解決できないことでストレスを溜めていたりします。上司が気がつかないと、会社を辞めたりするというケースにつながります。自分ではどうしようもできなくても、リーダーやマネージャだと解決できることがある要素が沢山あります。リーダーは、やる気が下がる要素を雑草をむしるが如く、1つ1つ解決していって、チーム全体のやる気を高めることが何にも増して対処しなければならない課題です。
やる気を下げる要素をなくすことの大切さはわかっても、予算がなかったり、人事異動で解決することができなかった場合、どうすれば良いのでしょうか? これは奇麗事に近くなるのですが、チームのメンバーとよく話し会って、私はこの問題に対して解決するために知恵を絞っていることをアピールすることは最低でも必要です。メンバーの言うことを無視したり、適当にお茶を濁したりしてその場を逃げれば、ああ言っても無駄なんだなと思ってしまうのが人間です。どうしても解決できないけど、悩みを共有して、解決策がないか考えてみようと言うだけでも全然違います(もっとも、口だけではいけません。実行してなんぼです)。
あと証券会社みたいに株価の上下は自分と全く関係ないところで動くという職場だってあります。そういう場合は、自分で何もできないのを恥じたり、悔やんだりしても意味はありません。素直に仕事帰りに仲間を誘って、夜の街で憂さ晴らしをしましょう。大声を上げてもいいように、カラオケBOXで歌いまくってストレス解消するのも良いでしょう。そうすると何も解決していないのに、気持ちはよくなっています。新橋や新宿池袋など、サラリーマン達が飲み屋で楽しむ姿は、飲まなければやっていられないという気持ちを昇華させ、具現化した姿です。 プーチンやブッシュさん、福田さんをはじめ、いろんな人のせいでおいらが苦しんでいるんだーーー!! って、大声上げたり、ブログで書き綴ったりすれば、魂の叫びが昇華することにより、何かクリエイトしたくなる欲求が生じて、絵を描いたり、小説を書いたり、夕日に向かって走りたくもなります。それって、根本的な解決じゃないと指摘するのは簡単です。では他にどうすれば良いのか? 幕末のええじゃないか運動をすれば良いのか?
閑話休題。やる気をあげる要素は、食う寝る遊ぶを満喫させるという方法でもOKです。好きな趣味をするのも良いでしょう。思いっきり運動して体を疲れさせて熟睡するのも良いでしょう。忙しいからといって、寝る間を惜しんで、体をボロボロにして無理やり仕事をするよりは、1日会社を休んでぐっすり眠って、心身ともにリフレッシュした状態にしてから仕事をするほうが効率と信頼性(凡ミス防止)が上がります。一方で、やる気が下がる要素を減らしていくには、リーダーやマネージャーがチームのメンバーそれぞれの方が活き活きと仕事をしているか、死んだ魚の目みたいになっているのかをよく観察して、死んだ魚みたいだったら、何が原因なのかを調べることが必要です。もっとも、やる気が下がる原因が、景気や天気など外部要因で、リーダーやマネージャーでもどうにもならないことだってあります。そういう時は、「時局を読む力」で取り上げますが、この先は明るいとか、この問題を解決して突破口を開こうといった、未来に対する積極的な対応をすることで、社内が明るくなることがあります。嫌々やっても変化しなければならないとしたら、時代の変化を先取りして、積極的に変化していこうという建設的な企業文化へとつながるからです。なにもしないで消滅する位なら、何かやって失敗して消滅した方が数段マシです。
大企業や官公庁など、もうどうにも動けないところが日本でも数多くあります。外から見ると昭和の時代で時計が止まってしまったようです。そういうところにいる人は、生きる屍となって、山手線をはじめとする電車で数多く見られます。人間、誰だってやりたくない仕事を嫌々やっていれば、死んだ魚の目みたいになってしまうのも止むを得ません。彼らの目が活き活きとなるには、やりたいことを思う存分やるように、気持ちと行動を転換させる必要があります。まもなく、いや既に大恐慌時代は始まっていますが、大恐慌がもたらす大量失業と食糧危機、エネルギー危機は、いままで20世紀型社会を維持するのは不可能だということを多くの人に知っていただくには必要なことなのでしょうが、代償が大きすぎる。
橘みゆき 拝