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新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

ジカ熱の性交感染はconfirmモードに

2016-02-03 23:47:44 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカ熱の性交感染。たとえば、正確さを要求されるメディア取材などでこれをどう表現するか。これまでは性交感染しますと言っちゃったらダメで、「ジカ熱は性交感染、理論的には有り得て状況証拠的な報道はあるけど、まだわかりません」のラインでした。今回、「ジカ熱の性交感染、米国の当局者がconfirmしたと言ってます」のレベルに。まだ「エビデンスがあります」「〇〇というペーパーがあります」レベルには至っていないものの(N=1)、少々ニュアンスが変わりました。

  • Zachary Thompson, director of Dallas County Health & Human Services談。
  • 性交感染の第一例を確認。
  • そのセックスパートナーはベネズエラ渡航中に感染し発症。
  • 性交による感染がはっきりしたので、今後、予防せねばならない。そのために禁欲が一番であるが、次善の策としてコンドーム使用を。
  • ジカウイルスは最初タヒチの男性の精子から見つかり、また、セネガルでウイルス研究していた研究者がコロラドに戻った後、妻が感染したという前例はある(が性交感染とはっきり確認されたわけではない)

ということで、少しハッキリモードで言えるようになりました。

http://pix11.com/2016/02/02/first-sexually-transmitted-case-of-zika-virus-in-u-s-confirmed-by-dallas-officials/

First sexually transmitted case of Zika virus in U.S. confirmed by Dallas officials


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ジカ熱の背景に、ブラジルの現状を理解するごくごく基本的なこと

2016-02-02 17:59:23 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

いまジカ熱対策で世界中の注目をあびるブラジルですが、その社会的背景を理解するごくごく基礎的知識の共有。

ひとことで言って、ブラジルという国はガタガタです。

ブラジル通貨(レアル)の相場グラフはこんなことになっています。
反騰の気配もなくつるべ落としです。

こういう状況でなにが起こるか。

  1. 1年で40%も下落してしまったブラジル通貨安で「お得感」が出て、諸外国から観光客が継続的に増えています
    実際のところ、リゾートホテルは相当にぎわっているそうです。
    つまり、ブラジル国外にウイルスが持ち出されるチャンスが恒常的に増えているわけです。リオのカーニバルはヤマのひとつですがこれが終わっても、持ち出されリスクはさほど減りません
  2. 逆にブラジル国内は貧乏になります。実際のところ、高インフレ、株価暴落、さらには政治スキャンダルで昨年12月に財務大臣が辞任したりしています。この辞任した大臣は財政健全化に努めていたそうですが、その辞任によりブラジルの信用は毀損され、12月19日にはレアルの急落を招いています。
  3. 政治的混乱。石油会社ペトロブラスをめぐる大スキャンダルで大混乱。やはり昨年12月にはルセフ大統領の弾劾手続きがとられています。ウォッチャーによればこの弾劾は切り抜けるだろうとのことですが、求心力低下は避けられません。
  4. 政治的混乱+経済的混乱で国民は疲弊しています。庶民の妊婦の多くは、何倍にも高騰してしまった虫よけスプレーも買えずに無防備なのは、先に紹介したとおりです。

つまり、現状のブラジルは五輪景気に浮かれてなど全然なくて、政治経済的に相当マズイことになっていて、ジカ熱対策にも足枷になりかねない(ならないわけがない)状況にあります。

そのような基礎知識を頭の片隅に、ジカ熱のあれやこれやは読み解いてゆく必要があるでしょう。

参考:ニューズウィーク1月19日号p20

 

 


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貧富の差が絶望的に運命を分けるジカ熱

2016-02-02 12:16:06 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカ熱感染で、貧富の差が絶望的に運命を分けるというお話@ブラジル現地発。

  • ジカ熱感染で小頭症問題が、貧富の差により残酷に運命を分けている。
  • 記事ではセレブなLima さんとスラムのLourencoさんが登場。
  • セレブなLimaさんは、妊娠を延ばそうとしていたけど妊娠してしまった。おなかの赤ちゃんの器官形成期が流行期と一致するので(小頭症かどうかは7カ月目のエコーまでわからないので)心配で心配で泣いた。そして、器官形成期が終わるまでヨーロッパで過ごすことにした。往復の航空賃だけでブラジル庶民の月収の何倍にもなることを気にしつつ(さらにブラジル通貨が暴落している今滞在費は大変高く)、いまはブラジルを脱出して安心とロンドンからのインタビューに答える。リッチな妊婦は続々とブラジル脱出している。
  • スラムのLourencoさんは汚水の上に建てられたあばら家住まい。妊娠5カ月の失業者。自分に出来ることは、ただ、お腹の赤ちゃんの無事を願うことだけ。
    現地で虫よけスプレーは売切れ続出、薬局の棚はカラ。一部の漁具店などで在庫は残っているが、価格が何倍にも高騰していて、いま40万人いるとされる妊婦の多くは買えない。ブラジル軍は22万人動員して蚊対策をやっているが・・・

なんとも切ないお話しです。虫よけスプレーが何倍にも高騰して庶民が買えない。無防備ななかで40万人妊婦がリスクにさらされている。こういうカネで何とかやりようのある部分だけでもPHEICで前進してくれることを願いたいのですが。

ソースはalarbiya
http://english.alarabiya.net/en/perspective/features/2016/02/01/For-Brazil-s-rich-and-poor-disparate-response-to-Zika.html

For Brazil’s rich and poor, disparate response to Zika


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ジカ熱のPHEIC宣言に思う

2016-02-02 07:54:43 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカ熱のPHEIC宣言。ずいぶん早くなったなあという印象ですね。

WHOのPHEIC検討会議、2014年EVDをめぐる動き、2015年(否決された)韓国MERSをめぐる動きを思いかえしつつ、今回は見送りつつ、もうちょっと増えるか、ジカ熱⇒小頭症エビデンスのペーパーが出たあたりで発出かと思っていた管理人の読みよりワンテンポ早かったです。

EVDをめぐりWHOの動きが鈍かった、もっと速う動けと、世界中の大御所がプレッシャーかけまくっていましたから、あれは大きかったということでしょう。

ともあれ、モニタリング強化されるにしても、感染者の多くが軽症であることは足枷になりそうです。12月1日のWHOアラートに記された、テンポラリーな基準、疑い例基準の発熱は「37.2℃以上」と記されています。(精子内残存の件はとりあえず置いといて)ヒトヒト感染も無いジカ熱を視野に検疫カウンターのサーモグラフィーを37.2℃に設定・・・なんて現実性の無いことも、アリバイ的にデモンストレーション(まさか)?

現実的対応もないところで、騒動ばかりが盛り上がってゆくという展開はイヤですね。

蚊対策には注目です。ボルバキア蚊なんか、時折報道される割には普及してるように見えないのだけれど、より普及⇒コストダウン⇒さらに・・と展開してゆけるのかな。

(ボルバキア蚊がどうのこうのとネット上で展開してるみたいですが、あれには当面静観)

PHEICのWiki解説
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%9A%84%E3%81%AB%E6%87%B8%E5%BF%B5%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%85%AC%E8%A1%86%E8%A1%9B%E7%94%9F%E4%B8%8A%E3%81%AE%E7%B7%8A%E6%80%A5%E4%BA%8B%E6%85%8B

日本語報道
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160202-00000006-jij-int

 


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ジカ熱ウイルス変異説が表だって報道され始めた

2016-02-01 17:53:59 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

これまで専門家のあいだでひそやかれていたジカ熱ウイルス変異説が一般報道の活字になりだしました。

  • ハーバード大学 Flaminia Catteruccia, associate professor of immunology and infectious diseases at Harvard T.H. Chan School of Public Health,  のコメント
  • ジカ熱ウイルスが、小頭症を発生させギランバレーを発生する直接原因だとしたら、ウイルスがヒト環境に適合し、ヒトに対する毒性も強化されるように遺伝子変異が起こっていることを示しているのではないか。それはまだ証明されるには至っていないが、ただ、以前の研究から、ジカ熱が子宮内感染すること、および、神経系に影響を及ぼすことは報告されている。
  • 我々が困惑するのは、いったい何が変化していて、なぜ変化したのかわからないことである。
  • このウイルスの起源についてさらに研究が必要である。いまのところジカウイルスには2つの系統、アフリカ由来とアジア由来があって、今回中南米で流行しているのはアジア由来だということ。後者の方が神経系感染しやすい。

遺伝子変異の可能性について、小耳にははさめど、はっきり一般世間に向けて言及するのはこれまであまり見かけませんでしたが今後広くディスカッションされてゆくのでしょう。

ソースはハーバード公衆衛生校
http://www.hsph.harvard.edu/news/features/zika-virus-in-brazil-may-be-mutated-strain/

Zika virus in Brazil may be mutated strain


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ジカ熱のリオで今週末から始まるカーニバルってどう心配?

2016-01-31 15:34:00 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカ熱が吹き荒れるブラジル。メディアではオリンピックが心配されていますが、その前に「リオのカーニバル」というマスギャザリング問題があります。

リオのカーニバルとは、いったい何モノなのだろうとちょっと公式サイト見てみました。

  •  2016年の会期は2月5日~9日
  •  なかでもサンバパレードは2月7日と8日。13日にチャンピオンパレード
  • ストリートダンスは5~9日、毎日17時から午前3時。
  • 外国人観光客は毎年50万人訪れる
  • チケット購入ページを見ると、ほとんど売り切れ。客が減っている形跡まったくなし(2016.1.31閲覧)

外国人観光客、公式サイトで50万人集まるとありますが、別の日本語サイトでは100万人としているサイトもあります。メッカのハッジ巡礼が年により200~400万人ですから、同じケタ数のマスギャザリングということになります。

この人数が集まり、また世界へと散ってゆきます。帰った先にネッタイシマカやヒトスジシマカが活動中だったら・・・本当にexplosiveなことになるかもです。

リオのカーニバル公式サイト
http://www.rio-carnival.net/

「ブラジル内外から約100万人の観光客が殺到します」と書いてあるのはこちらのサイトhttp://univer.net/carnival/#unit-19917


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ジカ熱ワクチンの動き。なんとか年末までにという報道があるけど・・・

2016-01-30 22:18:35 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカ熱ワクチンの見通し。ややPR的な記事ですが。

  • ジカ熱ワクチン。今年末までには緊急使用できるようになる見込みで米加チームにより開発中。
  • この開発に関与しているのはUniversity of Pennsylvania, led by scientist David Weiner, University of Laval, led by Gary Kobinger, Inovio Pharmaceuticals Inc. and South Korea's GeneOne Life Science

本当に今年末に間に合うのか神のみぞ知るでありますが、どうなるのでしょう。

ところで、これとは別の話として、デング熱ワクチンが使えるようになり、チクングニヤ熱ワクチンが開発され、ジカ熱ワクチンが出来るとすると・・・

ネッタイシマカやヒトスジシマカが棲息する国へ行くトラベルワクチンは、蚊媒介関連だけで3本注射!ということになるのでしょうか。日本だって棲息しているわけで、20XX年、イエローブックに、日本旅行にリコメンドされるワクチン:デング熱・チクングニヤ熱・ジカ熱なんて記されていないことを願うばかりです。

ソースはCBC
http://www.cbc.ca/news/health/canadian-us-zika-vaccine-1.3424741

Zika virus: Canadian-U.S. vaccine could be ready by year's end

Human tests could start as early as September, says University of Laval's Gary Kobinger

Thomson Reuters Posted: Jan 28, 2016 8:32 PM ET Last Updated: Jan 29, 2016 1:45 PM ET


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ジカ熱が拡大する2つのワケとは

2016-01-30 22:16:53 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカ熱が拡大する理由。VOXから。

  • ジカ熱はこれまで流行のなかった地域に拡大している。
  • チクングニヤ熱は2013年まで西半球では見られなかったがその後急速に拡大し、2015年には米本土フロリダでさえ見られるようになってきた。
  • デング熱は新たにPuerto Rico, Florida, Gulf Coast states, and Hawaiiでも見られるようになり、ブラジルでは2014年に56万9千例だったものが2015年には160万例まで激増した。
  • ジカ熱・チクングニヤ熱・デング熱は共通の蚊により媒介され、その理由はわかっていないが、最近は以前よりも効果的に新しい地域に展開するようになってきている。これまで感染者がいなくて免疫のない地域に。
  • アリゾナ大Heidi Brownにゆれば、感染拡大には3つの要素がある。①蚊の数 ②感染したヒトを咬む蚊の数 ③ヒトを感染させるだけの長期間生き残る蚊の数
  • 蚊は気温が高く湿度も高い環境を好む。したがって、この条件を満たすような変化、地球温暖化が蚊の棲息範囲を拡大している。
  • さらに、ヒトがより多くの移動をするようになり、新たな地域に病原体を持ち込むようになった
  • ますます多くの人が高密度のところに住むようになった

要は、地球温暖化と、人間がより多く移動するようになったことが原因だという話で、いずれも対策には大きな困難がともなうことばかりです。

ソースはVOX
http://www.vox.com/2016/1/20/10795562/zika-virus-cdc-mosquitoes-birth-defects

Climate change and globalization may help diseases like Zika spread


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ジカ熱発生国の整理(ProMED見出し)

2016-01-30 19:30:44 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカ熱の報道が世界中で燃え上がりつつあり、ごちゃごちゃになりがちです。

とりあえず28日付ProMEDの見出し貼っておきます。今のところ報告されている場所はここということで。


1.中米
Mexico and Central America
---
Mexico
El Salvador
Honduras
Nicaragua (Managua)

Caribbean
---
Dominican Republic
Haiti
Guadeloupe and St. Martin
Barbados
Martinique
USA Virgin Islands (St. Croix)

2.南米
South America
---
Bolivia
Brazil:
- Ocular malformations, Pernambuco state
- Microcephaly, national
- Pernambuco state
- Mato Grosso state
- Rio Grande do Norte
- Piracicaba, Sao Paulo state vector control
Colombia (national)
French Guiana and Suriname
Ecuador
Guyana
Paraguay

3.アジア
Asia
---
Taiwan ex Thailand

4.輸入例だけ(国内感染は無い)が報告されている国
(とりあえず今のところ行ってもリスク報告されてない国)
Imported cases with no possibility of ongoing transmission
---
Canada (British Columbia province) ex El Salvador
United states:
- Arkansas
- Florida
- Hawaii (Oahu), USA ex Brazil
- Illinois
- New York
- Texas
- Virginia
Finland ex Maldives
Denmark ex Central and South America
Germany ex Haiti
Austria ex Brazil
Italy, Spain, England, Portugal
Switzerland
Israel ex Colombia

http://www.promedmail.org/post/3974426

 


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ジカ熱対策でブラジル保健大臣が “ボロ負け(badly losing)” と白旗。。。

2016-01-28 13:55:20 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ブラジル発のジカ熱案件。ブラジル保健大臣が“badly losing the battle” と堂々と発言してしまい沸騰しています。

  •  発言の主はブラジル保健大臣Marcelo Castro 氏。地元紙が同氏の「我々は媒介蚊との闘いにボロ負けしつつある we are badly losing the battle against the mosquito」との発言を報じて騒動に。これを受けて、同氏の辞任をうったえる報道も。
  • ブラジルでは1950年代に蚊対策が奏功し、いったんほぼ撲滅されていた。しかしその後近隣国から徐々に入ってきており、ここ数十年増加傾向にあった。
  • ジカ熱は当初、デング熱よりも軽い症状ゆえに問題視されていなかった。しかしながら、ブラジルにおける小頭症児の出産が激増し4000例に迫るにつれ大問題になっていった。(2014年には150例しか発生していなかった)
  • いま、軍隊22万人を動員して蚊対策にあたっている。生活保護受給世帯の妊婦40万人に対して虫よけスプレーを配布。
  • 現地での虫よけスプレー価格はここのところ3~4倍に高騰している。
  • 一方コロンビアではAlejandro Gaviria大臣が流行中心地を訪問、地方職員対象の啓発ツアーをまわっている。この国ではすでに13500例の発生をみているが、60万例まで増加するだろうといわれている。

保健責任者の大変ショッキングな発言です。これが途上国政治家一流のテクニック、衝撃的発言でゆさぶって先進国から支援をせしめるというスキルにもとづく発言ならば、その意図どおり事態がすすめば良いですが、そうではなくて本当に白旗発言ならば深刻です。そしてこの大臣を引きづりおろそうと考える人もいる模様で、しからばますます混乱するわけで深刻になります。本当のところどうなのか、、、

ソースはガーディアン(実際にクリックしてみると、わかりやすい動画もご覧になれます)http://www.theguardian.com/world/2016/jan/26/brazil-zika-virus-health-minister-armed-forces-eradication

Brazil is 'badly losing' the battle against Zika virus, says health minister

 


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