音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

キングとクイーンのクリスマス・アルバムを聴く

2011年12月22日 | インポート
 つい先日、但馬にも初雪が降った。
 雪国のさがのようなもので仕方なくというかようやくスタッドレスタイヤを履かせた車の中で聴いているのが、2008年にリリースされたアレサ・フランクリンの 『THIS CHRISTMAS ARETHA』だ。
 アレサ・フランクリンのような長いキャリアを積んだヴォーカリストならば、一枚や二枚の季節限定アルバムを出していてもおかしくないだろうが、ことさら、クリスマス・アルバムというと勝手が違うようだ。
 リリースまでの道は険しく、周囲の反対を押し切るかたちで届けられることになったこの『THIS CHRISTMAS ARETHA』は、当初の杞憂などうそのように内容的にも充実している。

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YouTube: Aretha - My Grown Up Christmas List

 そして、クリスマス・アルバムという名目がなければ、いつもどおりのアレサ・フランクリンの新作として聴けてしまう。
 アレサのキャリアの中でもこれほどのトラディショナルな曲ばかりを録音したのは初めてではなかろうか。
 とにかくディープなクリスマス・アルバムである。
 2003年の『SO DAMN HAPPY』を最後にアリスタを去ることになったアレサが次に向かったのは、あろうことか引退の二文字だった。
 でも、すぐに彼女はそれを撤回してくれた。
 彼女が歌うことをやめてしまうことを一番恐れていたのは、実は彼女自身ではないだろうか。This_christmas_aretha
 新作こそ発表しなかったものの、精力的にライヴをこなし、5年の沈黙の末リリースされたのがこの『THIS CHRISTMAS ARETHA』である。
 個人的には1985年の『WHO’S ZOOMIN’ WHO?』からの彼女のファンである。
 このヒット・アルバムからポップ路線へと転向し、興行的には大成功を収めるが、売れ線狙いの音楽性には賛否両論があった。
 僕はずっとアトランティック時代のアルバムに愛着を持っていた。
 今更、『ARETHA NOW』の初々しさが欲しいわけではなく、ゴスペルを瑞々しく歌い上げるアレサの『YOUNG, GIFTED AND BLACK』が欲しいわけでもないのだが、彼女がもっとも彼女らしくあったアトランティック時代に匹敵するアルバムをリリースしていないのも事実だ。
 『THIS CHRISTMAS ARETHA』は家族とともにレコーディングを行い作り上げた、おそらくソウル界における史上もっとも黒いクリスマス・アルバムだということを公言しておこう。
 そして、予定より1年遅れの今年リリースされた最新作『A WOMAN, FALLIN’ OUT OF LOVE』の素晴らしさっていったらない。A_woman_fallin_out_of_love
 流れ的には、『SO DAMN HAPPY』の続編のようなR&Bアルバムに仕上がっているが、久々に彼女らしさが前面に出た、いかにも煌びやかでゴージャスなアルバムである。
 この最新作でアレサは相変わらず衰え知らずなことを証明してみせたわけである。
 このアルバムについては彼女自身のインディーズ・レーベルARETHA RECOADSからリリースされているので、現在、US盤限定でしか発売さていない。
 永年、聴き続けているミュージシャンには僕の場合一定の法則があるようだ。
 それは独自の、ほとんど至高的な世界を作り上げている人に限定されている。
 前述のアレサもそうだが、僕の場合、B.B.・キングがその法則から漏れたことは一度もない。
 ブルース界でキングの称号を与えられたB.B.・キングのおそらく初となるクリスマス・アルバム『A CHRISTMAS CELEBRATION OF HOPE』は、2001年にリリースされた。A_christmas_celebration_of_hope
 実に今から十年前のこの時期に発売されたわけである。
 名実ともにブルース界の頂点に君臨しているB.B.・キングが、U2との共演作「WHEN LOVE COMES TO TOWN」を皮切りに、数々の著名なミュージシャンとのレコーディングを続けた果てに「やり残した」的仕事にクリスマス・アルバムの制作があったのかもしれない。
 しばらくブルースから離れたい。
 その思いは、次作『REFLECTIONS』に繋がっていくわけである。
 MCAレーベル最後のこのアルバムは意外にもPOPアルバムであった。
 ルイ・アームストロングのカヴァー「WHAT A WONDERFUL WORLD」が収録されたこの『REFLECTIONS』は、B.B.・キング臭さを極力抑えたという点では、とても意義のあるアルバムだったと思う。Reflections
『A CHRISTMAS CELEBRATION OF HOPE』が発売された当初、僕はそれほどこのアルバムを歓迎して迎えたわけではない。
多くのクリスマス・アルバム同様、季節限定アルバムということに何ら変わることのない評価しか下さなかったように思う。
しかし、どういうわけかクリスマスが近づいてくると無性にコイツが聴きたくなる。クリスマス・アルバムだからというのではない。
B.B.・キングが歌うクリスマス・ソングだから聴くのである。
世に蔓延るいかにも能天気で明るいクリスマス・ソングと違ってB.B.のは渋くてブルース・フィーリングに満ち溢れている。
明日は但馬にも寒波が押し寄せてくるらしい。
久しぶりに寒くなる。
でも心の中にはコイツがあるからホットだぜ。
おそらく今年のイヴはドカ雪に覆われ、ホワイト・クリスマスなんてロマンチックな夜は味わえないはずさ。
 

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
明けましておめでとうございます。 (kingbee)
2012-01-03 12:15:44
明けましておめでとうございます。

昨年は更新をサボりまくったり、
皆様のところへお邪魔できず失礼しました。

今年はよろしくお願いします。
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